カテゴリ:造形材料の使いこなし
ポリエステル樹脂は用途によって、積層用、注型用、表面塗布用の3種類の物が売られています。
積層用 ガラスクロス(ガラス繊維で織られた布)に染み込ませて積層して使います。 注型用 シリコンなどで作った型に流し込み、レンズやクリスタル等の塊の造形に使います。 表面塗布用 ゲルコートという商品名で売られています。積層法で作った製作物の表面に塗布し耐候性や強度アップ、表面の平滑化に使います。流動性が高く硬化後非常に強いパテと言う印象です。 硬化させるときには温度に注意 ポリエステル樹脂はメチルエチルケトンパーオキシド(商品名パーメック)という硬化剤と反応させて硬化しますが、この反応は環境条件によって変化します。そのため、気温によって硬化剤の量を変えます(混合比は樹脂やパーメックの容器に書いてありますのでよく読みましょう)。 気温が低く樹脂の温度が低い場合は硬化剤の量を多めに、夏は硬化剤の量を減らして反応時間を調整します。また、硬化時に若干発熱しますが、混合比を守っていれば問題ありません。しかし大きい造形物を注型で作る場合は、中心部と周辺部では温度に差が出やすくなるので注意が必要です。中心部では反応熱がこもりやすく、自ら発生した熱でさらに反応が加速されますが、周辺部は外気に熱が逃げやすいため温度が上がらず硬化に時間がかかります。温度差が大きくなると硬化状態にムラが出来、ひずんだり内部にひび割れが出来る事があります。これを防止するには、何度かに分けて注型したり、硬化剤を減らし、型を保温して温度差が出ないようにしゆっくり硬化させる等の工夫が必要です。 また環境温度が高い状態で硬化剤を入れ過ぎると、混合中に急激な反応が起こり、発熱でさらに反応が加速し発火することがあります。ポリエステル樹脂は通常は「易燃性」ですから発火するとなかなか消えません。夏場や高温の場所での作業には十分に注意して下さい。 固まった表面がベタベタなのは ポリエステル樹脂が硬化剤と反応するときには空気中の酸素や水分が影響します。樹脂は空気に触れると酸素の影響を受けて硬化不良を起こし、べたべたといつまでも固まらない状態になります。注型した場合も積層した場合も型に密着した面はカチカチのツルツルに仕上がりますが、空気に触れている面はべたべたになるのは酸素の影響なのです。そのため樹脂にパラフィンを添加して空気を遮断するとべたべたにならすきれいに硬化させることが出来ます。樹脂に混ぜたパラフィンが硬化時に表面に浮いてきて膜を作る訳です。積層の表面積が広いものを作るときには効果的です。空気を遮断して硬化促進させるため「空気硬化剤」等という名前が付けられていたりしますが、実は「空気遮断剤」だった訳ですね。 ところがパラフィンが表面に作る膜には欠点もあります。パラフィンの膜は型に接した面にも出来ますが、この膜は撥水性が高く塗料や接着剤をはじくという問題があります。また、積層する際にも次の層を重ねるときにパラフィンが離型材の働きをしてしまい剥がれやすい物になってしまう危険性があるからなんです。そのためパラフィンを添加した場合は、硬化が進む前に積層を行なったり、硬化した後に専用の洗浄剤やヤスリで表面のパラフィンを念入りに落としてから、次の積層や塗装をしなければなりません。 最近はパラフィンを含まない「ノンパラ」の樹脂が主流になっています。元々注型用に使われるものでしたが、これを使えば型に接している部分は元々酸素に触れないので硬化不良は起こらず、膜が出来ないのですぐ塗装できます。しかし、空気に触れた部分はべたべたになりますから、やはりヤスリで削り取るか、アセトンで洗浄してべた付きを取ってから次の作業にかかります。もちろん硬化する前に積層してしまえば、最後にべた付きを取るだけです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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