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2005/03/16
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カテゴリ:株式投資
人は勘違いをしたり、過ちを犯したりするものです。
何かをチャレンジしようとすると、失敗はつきものです。

何かに取組み、残念ながら失敗したとき、
それだけでは「信頼」は大きく低下しません。

しかし、失敗は隠したり放置していると、
なぜかどんどん大きく育っていきます。
近年の経験では、日本の銀行の不良債権問題がそうでした。
「隠した失敗は、隠せなくなる大きさまで育つ」
という言葉もあります。

傷口が大きくなり、隠し切れなくなり、
そしてそれが白昼の元に晒されたとき、信頼は地の底に落ちます。

こんなことにならないように、
事前に情報を収集・把握する仕組みを構築し、
それに対する対策・対応を定義しておく必要があります。

例えば総合商社の三菱商事は、
世界中の数百という企業や事業に投資しており、
それぞれをBU(ビジネスユニット)という単位で管理しています。

リターンを狙うビジネスには当然、様々なリスクが伴います。
個々のビジネスには、カントリーリスクや為替リスク、
その他その事業特有のリスクがあります。
そしてこれら事業群のリスクを適正に管理することにより、
「まさかこんなことになってしまうとは思いませんでした」
などという事態を防止します。

では、三菱商事はどんな仕組みで、
数百もの事業投資先のリスク管理を行い、収益を上げているのでしょうか。

事業投資先には、利益を出して収益に貢献している事業もあれば、
見込みに反して損失を出している事業もあります。
そしていまは赤字でも、将来利益を出す事業に成長するものもあれば、
いつまでも赤字続きになってしまう事業もあるでしょう。
多くの事業を手掛ければ、それは仕方の無いことです。

しかし現時点で、将来見込み通りに
リターンが得られるようになるのかどうかは神様にしか分かりません。
このまま投資を継続すべきなのか、それともいま撤退するべきなのか。
その判断を毎回個別に恣意的にやっていては、銀行の不良債権処理のように
ズルズルと問題を大きくしてしまうことになる可能性があります。

そこで三菱商事では、ポートフォリオ戦略として、
BU制を基盤とした、MCVAに基づく管理により資産の入れ替えを常に図り、
「選択と集中」を強化していく戦略を取っています。

MCVA(Mitsubishi Corporation Value Added)というのは、
事業を評価する指標です。
ROEに加え、リスク管理と経営資源の有効な配分のための共通の物差しとして
導入した三菱商事独自の経営管理指標になります。
各BUのリスクに対し、これを上回るリターンを上げているかをチェックします。
ちなみに計算式は次のとおりです。
[MCVA=事業収益-(最大想定損失×株主資本コスト)]
(事業収益=連結純利益-(1-限界税率)×(有価証券売却損益+上場有価証券評価損)

そしてExitルールに従って、撤退するかどうかを判定します。

Exitルールとは、全社共通の撤退基準であり、
基準を満たさない事業投資からは原則撤退、
つまりExitするというルールです。
このExitルールに基づき、三菱商事は過去4年間に
123社の事業投資からExitし(売却や清算)、
総額約3000億円の資産を圧縮しています。

またそこで回収した資金は、エネルギー・資源分野、プロジェクト開発分野、
食糧・食品などの戦略分野に積極的に投入してきました。
現在Exit対象になっている子会社は約50社、
資産にして約2000億円あり、
今期以降も資産の入れ替えは継続しています。

このような仕組みにより、リスクマネジメントを行っています。
なぜこのようなルールが投資活動において有効なのでしょうか。

以前の日記でも紹介した表。
元値下落率現在値回復まで
100  5%  95   5%
100  20%  80   25%
100  50%  50  100%
100  80%  20  400%

例えばリスク管理をしているA企業があります。
A企業は、保有資産の最大2%までしか一事業に投資しません。
そして5%の低下でExitし、損失を確定させます。
だからたくさんの事業に投資しています。
投資の結果、リターンが上がる事業は、そのまま継続します。
投資の結果、リターンが下がる事業は、撤退します。
リターンが上がる事業があれば、下がる事業もあります。
だから、A企業の資産は大きく下がっても、
100から98とか97で留まる傾向があります。

100が95になる。5%下がる。
じゃあ、95を100に戻す。
そのためには、5%上がればそれでいい。
だからリスク管理をしていると、資産が減ることはあまりありません。

一方で、B企業はリスク管理を「知らない」。

投資というのは、失敗すると思ってやる人はいません。
みんな、うまく行くと思うからやります。
うまく行くんだったら、ドンと行こう、ということなる。
B企業は一発勝負で、資産をすべて、
見込みのある1つの事業につっこみます。
そこで、思わぬ落とし穴にはまります。
よくあることです。

100が50にさがる。下落率は50%です。
でも、表を見てください。
50に下がったものを100に戻すには、何%上がらないと駄目なのか?

50を100にするには、100%、上がらなければ駄目です。

ちょっと、よく考えてみて下さい。

A企業は5%下がったけれど、5%上がれば、元に回復。
B企業は50%下がって、100%上がってやっと回復。

どちらが有利だと思いますか?
これが投資におけるリスク管理の真髄です。

三菱商事は企業レベルでこれを行っていますが、
同様にこれを個人レベルで行うことが、
個人投資家がマーケットに居座り続ける絶対条件なのです。

相場は大勢の人が行く逆を行くのが鉄則ですが、
現在は皆、強気になっているように思えます。
皆が強気になった時は、相場の本来あるべきバリュエーションを
既に越えている時が多く、「赤信号皆で渡って怖くない」状態です。

そしてどこかで投資家は利食いに動きますが、
その時は皆が利食いするわけで、
高いバリュエーションはプロの機関投資家は買いませんから
ショック安が起こり、このショック安で初めてバブルと分かります。

しかし分かったときには損をしています。
致命傷を負わず、傷口を広げない為に、
適正なポジションサイズとリクス管理を徹底する必要があるのです。

(頭で理解しているだけでは意味がなく、実践することが重要なのですが、
 多くの方は実践せず、残念ながら市場から退場していきます。)

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最終更新日  2005/03/16 06:02:02 PM
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