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2005/08/25
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カテゴリ:雑感
 教わらなかった会計 経営実践講座 教わらなかった会計 経営実践講座

前回の続きです。

さて、あなたなら、この会社Eを買収しますか?
買収するなら、いくらで買収しますか?


実際には、J社はお金を出して買いました。
1ドルで。
当時の100円で買いました。

さて、1ドルで買うと、JからY銀行へ1ドル行きます。

ある日の午前10時に、1ドルをJがY銀行へ支払います。
そうすると、EはJの100%子会社になります。

それから10時1分に、どういう行動を取るかというと、
JがEへ25億円を増資します。
これは、今までのEの資本金はともかくとして、
25億円がEの中へ入るということです。
そうすると、Eのバランスシートでは、
資本の部に現金25億円が入ります。
そして、25億円じゃとても間に合わないということで、
あと25億円何とかしようと、考えます。

そして10時2分に、邦銀のスイスにある子会社銀行から、
25億円をEが借ります。
こうして、バランスシートには、25億円、また現金が入ってきます。
これで、Eの中の現金は、25億円+25億円の50億円になります。

次に10時3分に、どうするかというと、
Eがこの50億円をY銀行に返済します。
そうすると、Eの中の借入金は、Y銀行からの50億円と、
邦銀の子会社から借りた25億円が残ります。

そして10時4分に、何が起こったかというと、
Y銀行は、Eに対して貸しているお金50億円を債権放棄しました。
この瞬間、Eの借入金50億円は消えます。
(Y銀行のP/Lには債権放棄損50億円が計上されます。
 Eの借入金は50億円あったものがパーとなり、債務免除益になります)
そうすると残ったものは何かというと、
親会社Jから入ってきた資本金25億円と、
邦銀の子会社からの借入金25億円、この2つです。
(現・預金は、買収前のことを考えなければゼロです)

この時点で考えると、
Y銀行はE社の全株式を売って、1ドルの入金を得ました。
それから、50億円の借入金を返済してもらい、
残り50億円を債権放棄しました。
この結果、Y銀行はEに対しての経営責任はなくなりました。
J社はというと、バランスシートの左側に
子会社株式1ドル(100円)、
子会社への投資(増資分)25億円、
というふうに載っています。

さて10時5分になった、この時点から、
経営についての責任がどこにあるかと言えば、これはもう当然Eです。
もちろん元をだどるとJ社です。

実際には、こうしたことを1年くらい前から煮詰めて、
そしてこういうスキームで契約をしました。

しかし実際はこの時点、10時5分から、Jの大変な苦しみが始まります。
それが「アフターM&A」です。
M&Aは外部成長ですが、アフターM&Aは内部成長です。
それを達成するためには、大変な苦労が必要になります。

資本金というのは、当分返す必要はありません。
しかし、借入金25億円は返していけなければなりません。
では、このE社はどうしたらいいか。

まず何よりも、ほんとうに会社を良くするために、
超合理化をしていけなければなりません。
Jの意向によってはEの社長が交代することもあり得るし、
それから人員を削減することも必要です。
そういうことをすると同時に、生産性を向上させて、
販売力を強化して、この会社を黒字に持っていく努力をします。
もちろん、まだこの段階では、大赤字は消えません。
累積の赤字は50億円そのままで、借入金が25億円。
資本金が25億円ありますが、資本金に見合う財産なんて何もありません。
お金はみんなY銀行に返しましたから。

実際、初年度から徹底的に合理化を始め、初めの年は赤字。
次の年も赤字でしたが、その次から黒字になり、
その後はどんどん黒字になっていきました。
この黒字から借入金をどんどん返していきました。

「アフター」こそM&Aの最大の課題です。
アフターM&Aは、M&A実施後の経営問題で、
M&A後、部門間や取引先との調整がうまく行かなかったり、
労務間の問題が起こったりして、
当初予想した効果が上がらないケースは多いです。
成功させるためには、M&Aの折衝中から、
その後のこのを入念に検討し、実行に移していくことが必要です。
M&Aは手段であって、目的・ゴールではないのです。







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最終更新日  2005/08/25 07:55:56 PM
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