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カテゴリ:雑感
教わらなかった会計 経営実践講座
前回の続きです。 さて、あなたなら、この会社Eを買収しますか? 買収するなら、いくらで買収しますか? 実際には、J社はお金を出して買いました。 1ドルで。 当時の100円で買いました。 さて、1ドルで買うと、JからY銀行へ1ドル行きます。 ある日の午前10時に、1ドルをJがY銀行へ支払います。 そうすると、EはJの100%子会社になります。 それから10時1分に、どういう行動を取るかというと、 JがEへ25億円を増資します。 これは、今までのEの資本金はともかくとして、 25億円がEの中へ入るということです。 そうすると、Eのバランスシートでは、 資本の部に現金25億円が入ります。 そして、25億円じゃとても間に合わないということで、 あと25億円何とかしようと、考えます。 そして10時2分に、邦銀のスイスにある子会社銀行から、 25億円をEが借ります。 こうして、バランスシートには、25億円、また現金が入ってきます。 これで、Eの中の現金は、25億円+25億円の50億円になります。 次に10時3分に、どうするかというと、 Eがこの50億円をY銀行に返済します。 そうすると、Eの中の借入金は、Y銀行からの50億円と、 邦銀の子会社から借りた25億円が残ります。 そして10時4分に、何が起こったかというと、 Y銀行は、Eに対して貸しているお金50億円を債権放棄しました。 この瞬間、Eの借入金50億円は消えます。 (Y銀行のP/Lには債権放棄損50億円が計上されます。 Eの借入金は50億円あったものがパーとなり、債務免除益になります) そうすると残ったものは何かというと、 親会社Jから入ってきた資本金25億円と、 邦銀の子会社からの借入金25億円、この2つです。 (現・預金は、買収前のことを考えなければゼロです) この時点で考えると、 Y銀行はE社の全株式を売って、1ドルの入金を得ました。 それから、50億円の借入金を返済してもらい、 残り50億円を債権放棄しました。 この結果、Y銀行はEに対しての経営責任はなくなりました。 J社はというと、バランスシートの左側に 子会社株式1ドル(100円)、 子会社への投資(増資分)25億円、 というふうに載っています。 さて10時5分になった、この時点から、 経営についての責任がどこにあるかと言えば、これはもう当然Eです。 もちろん元をだどるとJ社です。 実際には、こうしたことを1年くらい前から煮詰めて、 そしてこういうスキームで契約をしました。 しかし実際はこの時点、10時5分から、Jの大変な苦しみが始まります。 それが「アフターM&A」です。 M&Aは外部成長ですが、アフターM&Aは内部成長です。 それを達成するためには、大変な苦労が必要になります。 資本金というのは、当分返す必要はありません。 しかし、借入金25億円は返していけなければなりません。 では、このE社はどうしたらいいか。 まず何よりも、ほんとうに会社を良くするために、 超合理化をしていけなければなりません。 Jの意向によってはEの社長が交代することもあり得るし、 それから人員を削減することも必要です。 そういうことをすると同時に、生産性を向上させて、 販売力を強化して、この会社を黒字に持っていく努力をします。 もちろん、まだこの段階では、大赤字は消えません。 累積の赤字は50億円そのままで、借入金が25億円。 資本金が25億円ありますが、資本金に見合う財産なんて何もありません。 お金はみんなY銀行に返しましたから。 実際、初年度から徹底的に合理化を始め、初めの年は赤字。 次の年も赤字でしたが、その次から黒字になり、 その後はどんどん黒字になっていきました。 この黒字から借入金をどんどん返していきました。 「アフター」こそM&Aの最大の課題です。 アフターM&Aは、M&A実施後の経営問題で、 M&A後、部門間や取引先との調整がうまく行かなかったり、 労務間の問題が起こったりして、 当初予想した効果が上がらないケースは多いです。 成功させるためには、M&Aの折衝中から、 その後のこのを入念に検討し、実行に移していくことが必要です。 M&Aは手段であって、目的・ゴールではないのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005/08/25 07:55:56 PM
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