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テーマ:ミステリはお好き?(1456)
カテゴリ:Mystery
明治39年
船場の老舗化粧品店、大鞠家の長男千太郎が失踪した。 パノラマ館に遊びに行った彼は、館に入ったきり忽然と姿を消した。 昭和20年 大鞠家の娘月子が寝室で刺され、命に別状はなかったものの、何故かその身体には血糊が振りかけられていた。 同じ夜、当主で入り婿の茂造も縊死体で発見される。これまた奇妙にも茂造の寝床には蝋人形が寝かされていた。 現状に駆け付けた波渕医師と女医西ナツ子は検死の結果、自殺ではなく他殺と断定。 警察の取り調べのさい、女子衆頭のお才は、踊る赤鬼を見たという奇怪な証言をする。 軍医として出征中の長男、多一郎に嫁いできた美禰子は探偵小説好きの義妹文子、友人のナツ子とともに事件の真相に迫ろうとする。 そこへ自称名探偵の方丈小四郎が現れ、推理を試みるも真相解明には至らなかった。 その後、先代夫人の多可が不審死し、茂造の夫人喜代江は酒に満たされた樽の中で溺死し、小四郎自身も命を落とす。 小四郎殺害の嫌疑をかけられた月子は警察関係者に連れ去られ、文子は空襲に巻き込まれ消息を絶った。 昭和21年 敗戦後、廃墟となった船場。 生き残った大鞠家の人々は、大鞠家殺人事件の謎に再び挑むのだった。 -------------------- 船場を舞台にした小説といえば「女の勲章」が思い起こされる。 本作もレトロ船場に生きる女たちの姿が活写されており、本作の中盤までは大衆小説の佳編を読むような心地が味わえた。 ミステリーとしても、横溝の作風を愛する人には格好のガジェットが揃っており、クラシックな 物理トリックも、本格ミステリーの基本に立ち返ったようなオーソドクシーを感じて好印象を受けた。 しかし結末に至ってこの私的印象は一変した。 探偵役を美禰子でも、ナツ子でもなくデウス・エキス・マキーナにゆだねるが如く、唐突な新たな探偵役の登場は何を意図して演出だろう。 その人物の、思わせぶりで迂遠な推理の手順には不手際を感じるばかりで、伏線回収がすっきり頭に入ってこなかった。 更に最後に及んで後出しジャンケンのように、ある秘密が 意外な動機 であると知らされても推理の手がかりにしようもないではないか。 終わりよければ全て良しとは言えない、結構。 再読も、結構です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022.03.07 19:06:50
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