見事な真夜中の『大脱走』であった。
映画ではない。かといって、そういうことが得意技の自閉症児(笑)、Sの話題でもない。
昨日の夜、2階の部屋の網戸に大きな虫がぶつかる音がした。
この衝撃は…とベランダを見ると、カナブンにしては大きな物体がひっくり返っている。チラッと角が見えた。
あわててベランダに出て捕獲! カブトムシの雄だ。大きさは小さめで5cmくらい。だいたい1年に1~2回飛び込んできていたのだが、ここ数年なかったので私も大喜び。
部屋に入れたがなんせ活きがいい。つかまえようとしてもすごい力ではい回り、時折飛び立つ! カブトムシが室内で飛ぶと結構な破壊力だ。恐い。で、降りてきてははい回るのだが、その間に何度かさわったSは、短い方の角が痛くてちょっとびびったが、その後もさわりたくてしょうがなくて追い回す。
私が小さいダンボール箱を用意する間も、Sが追跡していて扇風機をどかしたり、テレビの裏までのぞき込んだり、『見張り』をしていた。
(少し遊んでから外に返そう) と思っていたのだが、今の元気の良さでは危険すぎて遊べないので、「ひとまず今日は箱に入れて、明日、ちゃんと観察用の透明ケースを買って、おがくずとか朽ち木をひいて、餌のゼリーを与えよう。そしてしばらくうちで飼おう」と決めて、その箱に入れた。
翌日まで持たないと困るので、一応リンゴジュースをしみこませた綿を置いたりもしたが、見向きもせずにダンボール箱の中をウロウロ。
見やすいように、最初は一部サランラップで包んでいたのだが、2時間後には脱出。ゴソゴソ音がしていたのがしなくなったので開けてみるといない!
サランラップとダンボールのすき間から無理やり出たらしい。
台所に置いておいたのだが、音を頼りに発見できた。部屋の隅の掃除機のところにいたのを連れ戻した。
今度はダンボールをしっかり閉めた。しかし、呼吸の問題もある。もちろん、箱に穴は数カ所開けたが、心配もあって、フタのガムテープはわざとそう厳重にしなかった。で、今度は台所ではなく、ベランダに置いた。
「もし、脱出に成功したら、部屋の変な所にいられるよりも外に逃げてよしとする。成功したら『自由』を与えよう!」とベランダに置いたのだ。
そして、朝見ると…ダンボールに、大きな穴など、こわされた形跡はない。しかしまったく音がしないので(まさか死んだか…)と思いながら開けてみると…
見事に『もぬけの殻』だ!
引田天功なみの大脱出だ。 なぜならフタのガムテープは閉じられたままなのだ。 密室事件か。
後でよく見ると、ダンボールのつなぎ目に少し穴が空いており(たぶん、角で突いて開けた小さな穴)、そこをぐいぐい押してできたフタのすき間から抜け出していたようだ。
たいしたもんだ。これからは自然の中で元気に暮らしてくれ! うちにいれば自由はないけど、これから毎日高級虫ゼリー生活だったのに(笑)。
こんな時、Sがカブトムシのことを覚えていて「なんで逃げられたんだ」と文句を言うようだと大変なんだが、そんなことばはしゃべらないし、そういうことは忘れてくれる男だったから、助かったー(まだ寝てるし)。
こんなの捕った時には大変だ。絶対に逃がせない。
山の麓に住むなら、これくらいは常備しておくか…。