上遠野浩平 「禁涙境事件」
魔導戦争の隙間にあるその非武装地帯には、見せ掛けと偽りの享楽と笑顔の陰でいつも血塗れの陰惨な事件がつきまとう。積み重ねられし数十年の悲劇の果てに訪れた大破局に、大地は裂け、街は震撼し、人々は喪った夢を想う…そしてすべてが終わったはずの廃墟にやってくる仮面の男がもたらす残酷な真実は、過去への鉄槌か、未来への命綱か―。3日連続で上遠野浩平さんの「事件」シリーズの感想ですw今回は4作目で現時点のシリーズ最新作「禁涙境事件」について。今作では「禁涙境」という魔法が無力化されるという特殊な街を舞台に冒頭に到るまでの数十年の出来事を街で発生した奇妙な事件を回想する形式で描いております。各エピソードは短編風になっており、一種の連作作品とも読めますね。語られる謎は今シリーズらしく多彩で面白いのですが、ミステリとしては全体的に微妙な真相が多いですね。黒幕がバレバレな為でしょうかwファンタジーとして「禁涙境」という特異な場の謎に各エピソードが繋がって行くのは巧いですし、盛り上がりは中々でした。今作でも過去3作品とのリンクは健在でお馴染みの顔もチラホラ出ていますが、インパクト的には「残酷号」の存在が圧倒的。かなり唐突な登場ですが、こういう展開は「ブギーポップ」シリーズを思い出しましたwこれは今後のシリーズに大きく関わって来そうですが、どう主要キャラ3人組と絡んで行くのか楽しみですね。あと、端役では冒頭の挿絵にもある走っている人が妙に気に入っておりますwwという訳で、まだまだシリーズ途上という感じなので早く続編を発表して欲しいものです。