シリーズ第一作「MAZE」で非凡な才能を見せた神原恵弥。その彼が北国のH市を訪れた。不倫相手を追いかけていった双子の妹の和見を連れ戻すためだが、もう一つ重大な目的があった。それはH市と関係があるらしい「クレオパトラ」と呼ばれるものの正体を掴むこと。人々の思惑や駆け引きが交錯するなか、恵弥は何を知ったのか。粉雪舞う寒空に広がる、恩田陸の無限のイマジネーション。
昨日の「MAZE」に続いて恩田陸さんの「クレオパトラの夢」の感想です。
今作では「MAZE」に登場した強烈キャラ・神崎恵弥が語り手となり、物語の舞台も砂漠の遺跡から北海道のH市と全体的な印象は大いに変わっているものの恩田作品特有の腹の探り合いは健在ですw
特に恵弥と双子の妹の和見とのやり取りは必見ですね。
今作の謎の中心は「クレオパトラ」と呼ばれる謎のモノ。
幻想性と論理の積み重ねがメインの「MAZE」と比べ、何らかの思惑を持つ者達が直接的に動き回る今作はハードボイルド的と言うかスパイ小説的と言うか雰囲気は異なります。
私は、どちらかと言えば前作の方が好きですね~。
恩田作品は閉鎖的な状況での物語展開が絶品だと思いますが、動きが多いと違和感を感じてしまいます。
なので今作は、腹の探りあいは楽しめたものの肝心の「クレオパトラ」の正体や事件の真相も特に感銘は受けず、そのまま読み終わってしまったという感じです。
恵弥のキャラは良い味出しているので他の作品でも読んでみたいですが・・・。
あと、舞台となるH市の名所を描くシーンは北海道人としては楽しめましたし、ほんの少しだけ登場する札幌は嬉しかったですねw
手元にある恩田作品では「月の裏側」を昨日読み終わったので、いずれ感想を書きたいと思います。