カテゴリ:障害者と働く
「O君なんですけど」 <うん>
バインダーを持った山田がまじめな顔(いつもだけど)をして私に 「明らかに、既存のデーターより出来高が落ちてます」 <なるほど> 「どうします」 <放置して、ただし目を離さないように> 「いつもどおりしますけど、何か問題がありそうなんですか」<あのコが前の会社を辞めたの理由は伝えなかったな、何だと思う> 「ニ三日休んだらもう来なくていいって言われたと聞きましたけど」<それは表向きの理由だよ> 「あと、仕事が出来ない」<養護学校を出てから四年も務めて、もう来なくていい、それはおかしいだろ。少しくらい出来高が少ないのは雇用主も承知してるだろう、本当の問題はもっと深刻だよ> 「差し支えなければ教えてください」<あのコは前の会社で寿司折に紅しょうがを入れて蓋を閉める仕事をしていた> 「はい知ってます」 <出来高は他の障害者の80%ぐらいだった。ある日雇用主が四年にもなるんだからもう少しガンバレと言ったらしい> 「そしたらガンバッタのですか」 <そう思うか> 「さあ」 <まず、あちこち具合が悪くなって休み始めたらしい> 「今みたいに」 <そう今みたいに、暫くそれを繰りかえしたけど、雇用主はそれでも解雇しなかった。祖父母に促されて出勤した彼は、今までの倍近い仕事をこなしだした> 「やったら出来るんですかね」 <そんな感動物語じゃない。その寿司折には紅しょうがが入ってなかった、蓋は閉められていたから消費者が食べるまで判らない> 「別に其れぐらい問題ないと思いますけど」 <君は紅しょうが嫌いか ![]() 「はい ![]() <紅しょうがの入ってない寿司折が許せない消費者がいたらどうする。それは立派なクレームだ。彼のいた会社は空港やデパートの食品売り場に商品を出していた、その問題が表面化してからすぐ回収して廃棄して・・・・ 会社は被害の請求はしないそうだけど、もう障害者の雇用は考えるって言ってたな> 「そして彼は、会社から退職を促された」 <そう会社から解雇された可哀想な障害者として祖父ちゃん祖母ちゃんにちやほやされる毎日を取り戻したわけだ> 「なるほど」 <つまり雇用主がいやになって退職を促すように仕向けるのはこのタイプのコの特徴だな、したがって彼の作る製品に何かのトラブルが起きる可能性が十分に考えられる> 「注意します、でもラインからはずさないのですね」 <此処で思い通りにはさせない> 朝礼の直前、O君のお祖母ちゃんから電話がはいった。 この項、続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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