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カテゴリ:その他
とても勉強になった。
「精神科」「神経科」「心療内科」等の違いを、初めて知ることが出来た。 また、その名称が、世の中で混然としたまま使用されている理由も分かった。 それらの医院の扉を叩くことに対し、抵抗が少なくなってきたのは、歓迎すべきこと。 また、精神科医が処方する薬についても、ある程度知ることが出来た。 「抗うつ剤」は、病気の根治を目指す薬で、効果が現れるのに時間を要するが、 「精神安定剤」の投与は、即効性はあるが、対処療法にすぎないものだということ。 さらに、これらの薬がもたらす副作用を、よく知っておく必要があるということ。 私が、本著で最も衝撃を受けたのは、p.19から始まる次の部分。 同じ自殺なのに、なぜ子供と大人の扱いはこうも違うのか。 私はそこに、人間の心に対する大きな誤解があるように思えてならない。 それは、「年齢を重ねるほど人間の心は傷つきにくくなる」というものだ。 子供の心はちょっとしたショックでも簡単に壊れてしまうが、 大人は多くの人生経験を積んでいるので、心が頑丈にできている -そういう先入観があるのではないだろうか。 (中略) うつ病の好発年齢(よく発症する年齢)は四〇代以降とされるのだが、 それは、セロトニンをはじめとする脳内の神経伝達物質の分泌量が、 加齢によって減少することが原因だと考えられる。 つまり、責任感とか人生経験などといった問題以前に、 人間は生物学的な次元で、年齢を重ねるほどうつ病になりやすくできているのである。 まさしく、私も大いに誤解していた。 そうだったのか……、目から鱗が落ちるとは、このことだ。 そして、もう一つ、p.67から始まる次の部分も、自分の無知を思い知らされた。 しかし一方で、これまで発達障害だと思われていた病気が、 必ずしも生物学的なものであるとはかぎらないというケースもあるから、話はややこしい。 「注意欠陥/多動性障害(ADHD)」がそうだ。 リタリンという薬が一定の効き目を発揮し、遺伝する傾向も強いので、 その意味では生物学的な病気だと考えられる。 しかし、昔は人口の三パーセント程度しかいなかったこの病気が、 いまは子供の十五パーセント程度にまで増えていることがわかってきた。 生物学的な先天性の病気だとすれば、急にこれほどの増加をするのは説明がつかない。 社会的な要因によるものと考えることが自然だろう。 具体的には、親の育て方が変わったことが、この病気を増やしている可能性があるわけだ。 ADHD増加の原因を、社会的な要因に求めることについては、 著者が「可能性があるわけだ」としていることから、その程度のものなのだろうけれど、 驚いたのは、「子供の十五パーセント程度にまで増えている」という、その数字である。 最近まで、発達障害を持つ子どもは、色々合わせておよそ6%と言われていたはずだが、 本当にADHDの子供が15%もいるとなれば、とんでもない事態である。 40人のクラスなら、同じ教室の中に6人ものADHDの子供がいることになる。 これは、ハッキリ言ってスゴ過ぎる……。 *** その他の部分も、非常に興味深いところが多かった。 例えば、今場所も休場することになってしまった朝青龍を、 以前、3人の精神科医が診断したとき、「適応障害」ではなく、 「神経衰弱」「急性ストレス障害」「解離性障害」といった診断名を付けた背景は、 「なるほど!」と納得させられるものだった。 また、大学教授昇任が、臨床実績でなく、論文の数で決まるシステムになっているため、 大学教授が、すぐれた臨床医師とは限らないということも、よく理解できた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.07.19 11:31:11
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