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2006年01月20日
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カテゴリ:雑考生活

友人である郡山ハルジさんの今日の日記は、たまたま過去のワタシの日記の題材をテーマに書かれた内容であった。「10年後のビジョン」についての話なのだが、ハルジさんの場合、“ちなみに今年40歳になるオイラの10年後ビジョンはやっぱり相変わらず「あの世」だ。”ということだった。これを読んで思ったのは、我々もそろそろ自分の「生き様」だけでなくて、「死に様」を考える年齢に踏み込んできているのだろうなぁということであった。
そこでふと思い出したのが、山田風太郎の名著『人間臨終図巻』である。これはワタシの本棚の中でも大事な本ランキングのかなり上位に入る宝物のような本で、一時期、会う人みんなに「読め読めよめよめ」とめったやたらと薦めていた覚えがあるぐらい偏愛している本のひとつである。

この本は分厚いハードカバーの上下巻で(今は文庫版もあるようだが)、その中に15歳~121歳まで総勢なんと924人、古今東西、世界中の英雄・政治家・作家・芸術家・芸能人・犯罪者などの様々な面々が、「人生の最期をどのように死んでいったか」を紹介する極めて悪趣味かつ高尚な一大交響楽なのである。この本の素晴らしいところは、とにかく取り上げている人選がこれでもかというぐらい多岐に渡って充実しており、しかも「○○歳で死んだ人々」という具合に年齢1歳きざみごとに紹介されているため、年齢順に沿って読むのも良いし、或いは「自分の今現在と同じ年齢で死んだ人はいったいどんな死に方だったのか?」というような読み方も相当興味をそそる。また、人名索引で自分の興味のある人から読むのも面白い。ワタシは、実は山田風太郎の書物というのはこれ以外読んだことがないのだが、淡々としながらも強烈なウィットに富んだ人物描写と解説もさることながら、なによりこの出版企画そのものの発想に絶大なる敬意を表したいと思う。

さて、そんな内容の本書の中で、ワタシが最も感動した死に様がこのヒト、91歳で亡くなった「武者小路実篤」の最期である。以下、感動の原文をそのまま転記します。 ワタシは、このようになって、死んでいきたい。
― 以下原文 ―

武者小路実篤(1885-1976)
昭和四十九年、八十九歳の武者小路実篤はPR誌「うえの」七月号に、ゴッホの自画像について次のような文章を書いた。
「彼はその絵を書いた時、もう半分気がへんになっていたろうと思う程神経質な顔になっていたように神経質な顔をして、この顔を見ればもう生きていられないような、神経質な顔をしていた。僕はこれでは生きていられないと思った。実に神経質な顔をしていて、もう生きていられない程神経質な顔をしていた」
(中略)
翌五十年、九十歳の彼は、同じく「うえの」の五月号に次のような文章を書いた。
「僕は人間に生まれ、いろいろの生き方をしたが、皆いろいろの生き方をし、皆てんでんにこの世を生きたものだ。自分がこの世に生きたことは、人によって実にいろいろだが、人間には実にいい人、面白い人、面白くない人がいる。人間にはいろいろの人がいる。その内には実にいい人がいる。立派に生きた人、立派に生きられない人もいた。しかし人間には立派に生きた人もいるが、中々生きられない人もいた。人間は皆、立派に生きられるだけ生きたいものと思う。この世には立派に生きた人、立派に生きられなかった人がいる。皆立派に生きてもらいたい。皆立派に生きて、この世に立派に生きられる人は、立派に生きられるだけ生きてもらいたく思う。皆、人間らしく立派に生きてもらいたい」

脳髄解体。―

正宗白鳥と武者小路実篤は、前者は厭世主義の、後者は楽天主義の、同じレコードを一生まわし続けた人であった。それでいて双方とも、読む者を飽かしめなかったのは、それがホンモノであったからだ。が、さしもの楽天主義の歌も、これでは一回転ごとに針がもとにもどるレコードと化した感がある。
昭和五十年暮、夫人がガンで入院した。彼は妻のいない朝食のテーブルで箸を持ったまま、母親を失った子供のように涙ぐんでいた。
翌五十一年一月二十五日、妻の見舞いに病院へ行ったが、その後倒れた。脳出血であった。妻は二月に入って死んだ。
だれもそのことを知らせなかったのに、実篤は以来食事をとらなくなり、ものを言わなくなった。そして四月八日夜、娘二人、孫七人に囲まれてこの世を去った。お釈迦様に甘茶をかける潅仏会の日。









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最終更新日  2006年01月21日 02時09分39秒
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