現代妖怪図鑑シリーズ その38 妖怪ナマケモノ
妖怪ナマケモノは天敵などを恐れて木の上で一生を送ります。多くの動物はこんな高い木の一番上には登れません。しかしそれでも”天敵”はいます。”小鳥”たちです。小鳥は綺麗な声で鳴き、その声で人々を楽しませます。しかし妖怪ナマケモノは人を不快にさせるために鳴いているようなものです。だから小鳥たちから攻撃を受ける時があるのです。「なんだ?」植木屋の川澄さんが自分の庭が騒がしいので見てみると……、小鳥が寄って来てあの木の上の”巣”を激しく突いていました。?「ぎゃああああああああああああああああああ!!!」叫び声のようなものが聞こえました。「なんだ?あれは?」多くのナマケモノがこの小鳥の攻撃によって巣から落とされることがあります。そして落とされたナマケモノは二度と巣に戻ることはできません。「もうすぐ冬だな。」植木屋の川澄さんは葉っぱを落とされた木が枯れないようにむしろを巻いたり、栄養剤のアンプルを指したり、肥料をやったりしました。その作業をしていると木の上から決まって、「がーーーーーーーーーーー!がーーーーーーーーーーー!」という声がするのです。「なんだか、高笑いでもしているように聞こえるなあ?」やがて、寒い冬がやって来ました。妖怪ナマケモノは頭が良くありません。冬が来ることを察知できないのです。当然冬の到来に備えての準備などもしません。この頃になりますと巣の葉っぱも食べ尽くし、巣はとても薄くなっています。穴が開いているところもあります。でも巣の修理などはしません。もう体力が無くなっているのです。ナマケモノは人間で言えばせいぜい20歳ぐらいまでしか活動しません。その後は巣の中にこもりきっているのです。やがて、厳しい寒さが訪れます。木の上にも雪が積もります。「あれ?」あの巣のような物がいびつな形になっていました。巣の上に雪が積もり、つぶれて傾いています。今にも落っこちそうです。そして夜中……、ドサッ!!大きな物音に驚いて、飛び起きた植木屋の川澄さんが庭を見てみると……、木の上にはもう巣は無く、木の根元に大きな雪の塊が落ちていました。「なんだ、雪の塊が落ちただけか……、」こうして妖怪ナマケモノは雪と共に地面に落ちることが多いのですそして春。雪がすっかり溶けた頃…、あの高い木のそばに大きな”土の塊”があります。それは猫ほどの大きさです。実はこの”土”が、落ちた妖怪ナマケモノのなれの果ての姿なのです。春先頃、こんもりとした土が木の根元に溜まっている事がありますが、それが木から落ちた妖怪ナマケモノが土に返った姿なのです。THE END