読書が好きだから、本が好きだから、できることならそれに関わる仕事に就きたいといった理由で編集者になりたいと思っている人もきっと多いのではないかと思います。 これは編集者を目指している人たちが持っている最もシンプルな動機だと思いますが、これだけでは 「なぜ、あなたは編集者になりたいのですか?」 と問われたときに、採用担当者の心を動かすだけの動機としては弱いのではないかと思います。
これは至極当然のことですが、本に関わる仕事をしている人たちというのは編集者だけではなく、出版社で編集部以外の部署の人たち、印刷会社や製本会社の人たち、本の流通を支えている取次会社の人たち、そして、本と読者との出会いの場である書店や図書館の人たちなど、実に多くの人たちがいるわけです。 そうした数多くの仕事がある中で、 あえて “編集者” を希望する理由をしっかりと自分の中に持ってほしいと思います。
一見、華やかなイメージのある編集者という職業ですが、アクシデントは日常茶飯事。 著者に叱られたり、ご機嫌を伺ったり。 同時に何冊もの原稿を進行して、それらの原稿を読んでは割付し、内容によってはコメントを付けて書き直しをお願いしたり。 そして、出てきたゲラの校正をして・・・。 そんなデスクワークを独り黙々とこなす日々。
もちろん、企画を立てて企画会議でプレゼンをする、著者のところに原稿の依頼 ・催促に行く、印刷会社の人たちやデザイナーの人たちとコミュニケーションを取りながら進行管理を行なうなど、編集部が舞台のテレビドラマで出てくるようなカッコ良く見える部分もあるかもしれませんが、実際には忍耐力と根気強さが求められる大変地味な仕事であることを知っておいてほしいのです。
このように書くと、なんだか 「編集者を目指すのは慎重に ・・・」 のような感じにとられてしまうかもしれませんが、決してそういうことではありません。 コツコツと進めていく仕事であるということを知って頂いた上で、 「こんな本を出したい、この著者にこんなテーマで書いてもらいたい」 といった熱き情熱を持ち、 「時代を切り拓く新しいものを創り出していきたい」 という心意気を持ち合わせているならば、編集者を目指す資格は十二分にあると思います。
編集者という人たちは、この情熱と心意気を絶やさずに常に持ち続けているからこそ、途中でどんなに苦労があっても、この仕事が面白くてやめられないのだと思います。