カテゴリ:音楽
今月のメト・ライブビューイングは、あのドミンゴが主役を歌う「シモン・ボッカネグラ」。
テノールであるドミンゴが、バリトンのタイトルロールに挑戦すると、話題になっている作品です。 ご存じの方もあるでしょうけれど、ドミンゴはこの役を、昨年10月のベルリンを皮切りに、世界展開しています。2月のメトにつづいて4月はスカラ座。 とはいえ、2月の来日中に体調をくずし、手術を受けているということなので、心配ではありますが。 さて、一説によるとパヴァロッティより年上、つまり70代!だというドミンゴの演唱、やはりりっぱなものでした。 青年を演じなければならないプロローグでは、さすがに視覚面も含めてちと苦しく、動きもにぶい感じがしたのですが、第1幕からは役柄との違和感もなくなり、そのせいもあるのでしょう、彼のまれな歌役者ぶりを堪能することができました。 瞬間瞬間の感情に入り込む技は、超一級です。 歌唱面でもまったく危なげなく、声域もあっているようでした。幕間のインタビューで本人もそう言っていましたが。 もともとバリトンからスタートしたひとですし、得意な役もオテロなど、テノールといってもある種バリトンに近い表現力が要求される役柄。 またヴェルディでは、バリトンはそれ以前のイタリア・オペラの男性低声より高いわけですから、声域、声質の落差はあまりないのでしょう。 さすが、貫禄の成果でした。 苦しそうだったのはむしろ指揮のレヴァインかも。病み上がりのせいもあるのでしょうが、膨張ぶりはファルスタッフなみ?肩で息をしているのが画面からもわかりました。何しろカーテンコールのとき、どんちょうにつかまっていましたから。 音楽的にも上々の公演だったのではないかと思いますが(とくにアメーリア役のピアチョンカ)、改めて思ったのは、「これはブラームスの室内楽のような音楽だなあ」ということ。 美しいのですが、それを味わうために集中力を要求されます。語りが多いし、ある意味ワーグナー的といえばいえないこともないのでしょう。 やはり、イタリア・オペラの枠を逸脱した作品、という印象を受けました。 4月にはスカラ座で聴く予定なので、それまでにドミンゴが回復することを願いたいものです(ダブルキャストのBキャストはカルロス・アルバレスなので、それも悪くない、こともたしかですが)。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
March 7, 2010 10:02:14 PM
[音楽] カテゴリの最新記事
|
|