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ファンの間で静かにブレイクしているピアニストのひとりに、アルド・チッコリーニがいます。
1925年生まれの今年85歳。さすがに外見は、小柄な体がいっそう小さくなった印象を受けますが、音楽はまだまだ、というべきかいっそう力強くなり、とくに21世紀に入ってからの4度にわたる来日公演は、語り草になりつつあるよう。 イタリア出身のパリ在住、フランス国籍を獲得。サティのピアノ作品をはじめて全曲録音したことでも知られますが、レパートリーは広い。バッハのCDなども、清澄でありながら力強く、求心力があり、感銘を受けました。 昨日はそのチッコリーニを、すみだのトリフォニーホールで聴きました。 「協奏曲の夕べ」と銘打ち、ベートーヴェンの第3番と第4番の協奏曲。伴奏はハウシルト指揮の新日本フィルです。 お客の入りは少々さびしかったのですが、本当に好きな人、が来ているという印象を受けました。評論家の姿も多かった。 演奏は、それはやはり見事なものでした。 ふつう80を超えれば、いくら名ピアニストでも技術的には苦しくなるものですが、破たんはほとんどありません。さすがに大詰め、第4番のフィナーレではちらほらと指が回りきれないのが感じられましたが、些細なものです。 第3番台1楽章のカデンツァなど、技巧派ピアニストといいたくなるくらい立派なできばえでした。 何より音楽全体にしっかりと芯が通り、求心力があるのです。 がっしりとドイツ風、というのではありませんが、様式を保ち、クリアで、潔い。 それに対して、表情が大きくふれたのが緩徐楽章で、とくにより自由な形式の第4番の第2楽章では、ひとつひとつの音の広がりが豊かで、形式を踏み越えて音楽のなかにあるものを紡ごうとする姿勢が見えた、ような気がしました。 終演後はスタンディング・オベーション。老巨匠への畏敬もこめたような。こういう演奏家に憧れる気持ちは、わかるような気がします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
March 17, 2010 01:28:28 PM
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