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カテゴリ:演劇、観劇
作・川村 毅。昭和という時代に生きた二人の男について描いた作品です。
一人は世の中を変えたいという思想を持ち、人との出会いによって運命に翻弄されながら革命家となっていく男。 もう一人は半官半民の航空会社の一サラリーマンとして、強い意志を表示することなく会社の中で生きて行く男。後者の男は、作者の父親がモデルなのだといいます。 舞台は、1960~80年代を中心に描かれています。 昭和の時代とは、戦中、そして戦後があり、戦後数十年を経て生まれた自分には想像を絶するほど、日本は自ら大きく変わろうとしていたのだと、劇中に登場する事件で思い知りました。 作者(1959年生まれ)は、そんな激動の時代の中で(劇中の男は)穏便に生きる父親を間近に見ながら、対照的なもう一人の男の人生に想いを馳せて描いたのではないかと考えさせられます。 しかし、一見、交わることのない二人の男にも、共通点が見出されます。 自分の考えを他人からどう思われても気にしない、ということ。 結局は一番強い人間として描かれているのではないでしょうか。 革命家の男も、サラリーマンの男も、その強さは孤立を意味するのではなく、結果的に最も愛すべき人物となって、人々の心に刻まれています。 この作品の演出家(高橋正徳・1978年生まれ)は20代。どちらの人物に対しても実体験という偏見がなかったことが、この作品を「昭和の男」の象徴的な生き方としてすっきりと描いたように見えました。 それぞれ革命家とサラリーマンの男を演じた、岡本正巳(チラシ画像・左)と小林勝也(チラシ・右)。 彼らが長年演劇界で生きてきた役者としてのものの見方という力が、激動の昭和の後半しか自分の目で見ていない私たちへメッセージを送っているようにも映ります。 (岡本正巳はその風貌から、革命家として熱く想いを語ってる姿に、どこかロマンを感じさせます。一方、小林勝也は、世間の流れに逆らわない人物を、ひょうひょうと生きているという説得力を持って見せています) こんなにさらっと言ってしまいましたが、世代によって、そして昭和の出来事を知る、知らないによっても、受ける印象が違うことでしょう。 最後の場面、二人の男がカウンターで隣り合わせになりながら語るところ。同じ時代を生きた男が共通の感情を持ち、二つの人生が一緒に着地したような安堵感を覚えました。 文学座アトリエ内に回り舞台を据えての目まぐるしい場面転換。 ただし、その場面ごとに起承転結があり、オムニバス作品の集結のような展開に面白さが倍増しています。 2時間40分(途中休憩10分)という時間に身を置き、タイムマシンに乗ってその時代を垣間見たような舞台作品の楽しさを存分に味わいました。 作・川村 毅、演出・高橋正徳、美術・乗峯雅寛、照明・金 英秀 (文学座アトリエにて)公演詳細はこちら チラシ画像について、文学座に掲載の許可をいただいております。無断で転載はなさらないでください。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006.06.23 12:47:25
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