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《櫻井ジャーナル》

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2011.04.29
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 福島第1原発の事故で放射性物質を大量に外部へ放出している。それ以降、日本政府は被曝線量の基準、被曝限度量を引き上げてきた。それだけ多くのリスクを背負い込めというわけで、多くの人から批判されるのは当然だ。

 しかし、その一方で「大したことはない」とする宣伝も盛んに流されている。100ミリシーベルトを浴びても1000人の内、5人から10人程度がガンになるだけであり、それ以下の線量で健康に被害が出ることは証明されていないから心配するなということのようである。

 ガンで死ぬ人は全体の約3割であり、それに比べると大したことはないとする人もいるようだが、その言い方を使うならば、人間は必ず死ぬ(科学的に証明されているわけではなく、経験則にすぎないが)わけで、戦争などの殺戮も大したことはないということになるだろう。

 かつて、薬害エイズが問題になったことがある。エイズ・ウィルスに汚染された血液凝固因子製剤を政府や製薬会社が警告を無視して流通させたため、血友病患者の間にエイズが広まった事件なのだが、当時、厚生省(現在の厚生労働省)の官僚たちは薬害以外のエイズが広まることを想定、その中に薬害を隠してしまおうとしていた疑いがある。当時、厚生省を担当していた記者によると、官僚たちはエイズが予想外に広がらないと焦っていたという。

 ところで、今年の4月はチェルノブイリ原発事故から25年目にあたる。事故が起こった後、IAEA(国際原子力機関)は放射性物質の被曝による被害は存在せず、将来にも原発事故の被害者であることがわかる人はでないと報告したようである。

 勿論、この結論は間違っていた。作業員は別にしても、事故から5年ほどで小児甲状腺ガンが急増、10年ほどすると妊婦へも影響が出始めたと話す学者もいる。広島や長崎に落とされた原爆の影響などから推測して、ガンが発症してくるのは20年から30年後からだとも言われている。つまり、チェルノブイリ原発の影響が明らかになるのはこれからだと考えるべきだろう。

 実は、原爆の影響も長い間、秘密にされてきた。この事実は広く知られていたのだが、その内幕に迫ったのが昨年8月にNHKが放送した「封印された原爆報告書」。日本政府がSCAP/GHQに提出した181冊の「原爆報告書」をテーマにしていた。

 ところが、この原本がどこにあるのかが明確になっていない。SCAPに対して「原爆報告書」を提出したという事実を政府は「承知していない」としている。この報告書が存在することを認めると、戦後、日本政府(官僚機構)が主張してきた被曝による被害に関する話が崩れ去るだけでなく、より深刻な被害があることを知っていながら隠してきたことも認めることになるからだろうか。

 この原爆被害の調査には公表できない秘密がある可能性が高い。戦後、日本が生んだ代表的な「インテリ」で、戦争に反対する活動を最後まで続けていた加藤周一も原爆が投下されて間もない広島へ「原子爆弾影響合同調査団」の一員として入っているのだが、そのときのことを生前、親しい人にも話さなかったようである。彼にも口にできないような「何か」があったのかもしれない。

 青酸カリなどは生体実験で正確な致死量がわかっているようだが、通常、放射性物質に限らず、人体の影響を知ることは難しい。例えば「環境ホルモン(内分泌攪乱物質)」の場合、一般に知られるようになったのは1997年から。この年にシーア・コルボーンらが『奪われし未来』という本を出し、警鐘を鳴らしたのである。

 しかし、化学業界では、遅くとも1976年には問題になっていた。当時、ある大学で化学を専攻していた大学院生に聞いた話では、測定限界ギリギリ、おそらく測定できないほど微量でも生殖器に致命的なダメージを与える化学物質が次々に見つかっているということだった。こうした事実は研究者自身が経験的に知ったようだ。

 被曝限度量の安易な引き上げは、間違いなく将来に禍根を残すことになる。現在の「科学的な知見に基づく適切な判断」も「将来の知見」で否定される可能性は小さくない。「ヒトの浅知恵」を認識することが人間の知性である。





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最終更新日  2011.04.29 15:07:56



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