カテゴリ:カテゴリ未分類
消費税の引き上げが大企業/富裕層の負担軽減とセットになっていると多くの人が指摘している。おそらく、この指摘は正しい。野田佳彦政権は社会保障改革や財政健全化など意に介していないようだ。
原発の再稼働やTPPと同じように、消費税増税関連法案を成立させるため、野田首相は不退転の決意で、政治生命を懸けて、命を懸けて頑張るらしい。かつて彼は「税金に天下り法人がぶら下がっている」と主張、この「シロアリ」を退治しないで消費税率を上げるべきでないとしていたのだが、そんなことは忘れたようで、天下りを放置したまま消費税を引き上げようとしている。 自分自身の政治生命に終止符を打ち、民主党どころか日本を「ぶっ壊す」ことに成功しても、支配階級の一員として安穏に暮らせることが約束され、どこかのオフショア市場の金融機関に口座を持たせてもらえるなら、安心だ。 このオフショア市場は経済をぶっ壊す存在である。これが存在する限り、財政を健全化させることは不可能である。天下りを根絶するだけでなく、オフショア市場の取り引きを透明化しなければ、何も解決しない。「金融のグローバル化」にメスを入れる必要があるということだ。 昔からヨーロッパには富裕層の資産を隠すオフショア・システムが存在した。スイス、ルクセンブルグ、モナコなどが代表例だ。 そうした富裕層の資産の源をたどると、十字軍に突き当たる。11世紀から13世紀にかけて中東から北アフリカにかけての地域を侵略し、財宝だけでなく重要な知識(文献など)を手に入れたのだが、こうした略奪を抜きに近代ヨーロッパを語ることはできない。 近代ヨーロッパを作り上げる基盤としてラテン・アメリカでの略奪も無視できない。先住民が保有していた貴金属や財宝だけでなく、ポトシ銀山から膨大な量の銀が持ち出されているのだが、いまだに総量は明確になっていない。ただ、近代ヨーロッパ経済の原資になったと推測する人がいるほど膨大な量だとは言える。 イギリスの場合、破綻寸前の資本主義経済を建て直すため、麻薬貿易にも手を出している。その前段階として1840年に引き起こしたのがアヘン戦争だ。いわば、強盗と麻薬取引で近代ヨーロッパ、資本主義は幕を開けた。 ただ、19世紀は今と違ってオフショア市場が整備されていなかった。この当時、アメリカでは不公正な手段で巨万の富を築いた富豪が出現、「泥棒男爵」と呼ばれている。ジョン・D・ロックフェラーやJ・P・モルガンが代表的な存在だが、資産の隠し場所が限られていたため、彼らは産業に投資することになり、結果としてアメリカの生産基盤を築くことになった。 ヨーロッパで所得や資産を隠すシステムが拡大する切っ掛けは、第1次世界大戦だという。戦費を調達するために政府は増税するのだが、金持ちは税金を逃れるために資産をタックス・ヘイブンへ沈めたのである。 それ以上に大きな変化が1970年代に起こる。経済活動の国際化が進むにつれ、税金をどうするかが大きな問題になったのだが、そうした中、多国籍企業の要望に応える形でロンドンを中心とするオフショア市場ネットワークが出現したのである。単に資産を隠すだけでなく、税金を回避する手段を提供した。 ロンドンに対抗する形で1980年代に出現したのがアメリカのIBF(インターナショナル・バンキング・ファシリティー)や日本のJOM(ジャパン・オフショア市場)だ。巨大企業や大富豪はこうしたシステムを使い、税金から逃れることができる。勿論、このシステムには犯罪組織や独裁者の資産も流れ込んでいる。1980年代にオフショア市場と日本の大企業を結ぶパイプのひとつとして機能したのが無担保の転換社債やワラント債だ。 規制緩和や私有化を掲げる新自由主義経済の広がりもあり、この時期から富の集中が急速に進み、経済活動が停滞していく。「泥棒男爵」とは違い、産業を育成する必要がなくなったことが大きい。21世紀版の「泥棒男爵」を象徴する人物といえば、ボリス・エリツィン時代のロシアで巨万の富を獲得したボリス・ベレゾフスキー(現在はプラトン・エレーニンに改名)だろう。 南北問題を深刻化させたのもオフショア市場である。国際機関なり欧米の金融機関が親米独裁者が君臨する発展途上国へ「融資」、その資金は独裁者の資産としてオフショア市場へ流れ込み、欧米の銀行に戻る。独裁者が失脚すれば、その資産はどこかへ消えてしまい、残された国民は借金を返済させられる。早い話、大銀行とはタチの悪い高利貸しにすぎない。 アメリカにしろ、EUにしろ、日本にしろ、オフショア市場の問題を抜きに財政を論じることはできないはずなのだが、大多数の学者やメディアは避けている。つまり、大多数の学者や記者は「御用の筋」だ。言うまでもなく、オフショア市場の問題に触れない消費税論議もインチキである。そのインチキを維持するため、支配層は「秘密」を強化しようとしている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012.08.03 17:50:09
|