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《櫻井ジャーナル》

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2013.05.25
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 共通番号制度法が5月24日に参議院で通過、成立したという。「普通の国」なら、こうした法案は「ビッグ・ブラザー」だとして大問題になるだろうだが、日本ではごく一部の人びとを除き、国全体では大した話題にならなかった。

 言うまでもなく、「ビッグ・ブラザー」とはジョージ・オーウェルが1949年に書いた小説『1984』に出てくるキャラクター。オーウェルはソ連を批判する目的で書いたようだが、実際はアメリカやイギリスで現実化、日本は両国を追いかけている。

 『1984』を書いた当時、オーウェルは極秘機関「IRD」に協力していた。この機関をイギリス外務省は1948年、プロパガンダを含む工作を実行する目的で創設している。ソ連の影響がイギリスの左翼へ及ばないように、IRDはイギリス労働党を支援していたとも言われている。

 監視システムという点で言うと、1947年あるいは1948年に調印された「UKUSA(ユクザ)協定」が重要だろう。UK(イギリス)とUSA(アメリカ)で結ばれた協定。これは調印日も不明確なもので、イギリスのGCHQとアメリカのNSAが中心。GCHQは1942年に設立されているが、NSAが創設されたのは1952年、NSAの前身であるAFSAも1949年で、協定が調印された後ということになる。

 GCHQにしろ、NSAにしろ、存在自体が秘密にされていた。NSA長官が議会の委員会へ初めて呼び出された1975年になってからであり、GCHQの名前が初めてメディアに登場したのは1976年のことだ。それまでNSAは「No Such Agency」、つまり、そんな機関は存在しないと表現されるような存在だった。

 1976年にGCHQの存在をタイム・アウト誌で明るみに出したのはふたりのジャーナリスト、イギリス人のダンカン・キャンベルとアメリカ人のマーク・ホゼンボールだ。その記事が原因でホゼンボールは国外追放になり、キャンベルはMI5(治安機関)の監視下に入った。

 数年後、キャンベルはタイム・アウト誌のクリスピン・オーブリー記者と電子情報機関の元オペレーターを取材、この3名は逮捕された。オーブリー(Aubrey)、元オペレーターのベリー(Berry)、そしてキャンベル(Campbell)の頭文字をとって「ABC事件」とも呼ばれている。

 そうした弾圧を跳ね返し、キャンベルは電子情報機関の暗部を暴き続けた。1988年にキャンベルはECHELONの存在を明らかにしているのだが、彼の調査を日本のマスコミは無視していた。

 ECHELONに関しては、1996年にニッキー・ハガーが詳しい本を出し、その後、ヨーロッパ議会も報告書『政治的管理技術の評価』を公表している。日本でこの問題が取り上げられるのは、それからしばらくしてから。しかも、内容に問題がある。

 ヨーロッパ議会の報告書ではECHELONなどの電子技術を管理システムの一部としてとらえ、そうした技術を使った監視システムのターゲットは反体制派、人権擁護の活動家、ジャーナリスト、学生指導者、少数派、労働運動指導者、政敵などになる可能性が高いと指摘している。ところが日本ではカネ儲けという視点で取り上げていた。

 TPPでも言えることだが、日本のマスコミは支配の問題を「国対国」、しかも「カネ」という切り口で語ろうとする傾向が強い。「西側」でファシズム化が急速に進んでいることに危機感を抱かず、気にかけていない。「支配階級対被支配階級」、アメリカで好まれている表現を使うと「1%対99%」の対立が問題なのだが、無視している。

 一方、アメリカでは不特定多数の個人情報を集めて分析するシステム、PROMISがふたつの意味で1980年代から話題になっている。ひとつはシステムの能力、もうひとつはアメリカ司法省がこのシステムを横領した疑いが強まったこと。

 PROMISの優秀さ(庶民にすれば恐ろしさ)は日本の検察も認めていて、法務総合研究所は資料を1979年と80年に「研究部資料」として公表している。この当時、アメリカの日本大使館に一等書記官として勤務していたのが原田明夫であり、PROMISを開発したINSLAW社と実際に接触していたのは敷田稔である。原田は後に法務省刑事局長として「盗聴法」の法制化を進め、事務次官を経て検事総長に就任、敷田は名古屋高検検事長を務めている

 また、横領の問題では1987年に破産裁判所が司法省の不正行為を認める判決を出し、連邦地裁も1989年に原判決を基本的に維持する判決を言い渡している。1992年には下院の司法委員会が破産裁判所や連邦地裁と基本的に同じ結論の報告書を出した。

 後に巡回控訴裁判所や最高裁は逆の判決を出しているが、破産裁判所、連邦地裁、そして下院司法委員会が司法省の横領を求めた事実は消えない。こうした出来事を日本のマスコミは無視している。

 住民基本台帳ネットワークでも同じことが言えるのだが、共通番号制度法でマスコミは「便利さ」と「情報の流出」を語るだけ。支配層が庶民の個人情報を握るという発想の危険性から目を背けている。こうした仕組みができれば、勿論、アメリカの支配層も日本人の個人情報を容易に入手できるようになる。

 データベースがインターネットにつながっているなら、必ず情報は全世界に漏れる。犯罪に使われることは不可避だ。そうした危険性を承知の上で住民基本台帳ネットワークや共通番号制度法を導入する理由はひとつしかない。庶民の管理。自分たちが儲ける仕組みを維持することが彼らの関心事であり、その仕組みに反対する人間を見つけ、監視し、反乱の芽を摘むことが大事なのである。この仕組みが原因で庶民が被害を受けることなど気にしていない。支配層の情報を隠すシステムは1970年代から整備されてきた。





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最終更新日  2013.05.25 18:56:20



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