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《櫻井ジャーナル》

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2014.04.27
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 アメリカ/NATOの支援を受けたキエフのクーデター政権は東部や南部の反クーデター派を制圧する軍事作戦を展開中だが、ロシアのRIAノーボスチ通信によると、ロシア側が撮影した衛星写真にはドネツク州のスラビャンスクの周囲を1万5000名以上のキエフ軍が包囲し、約160輌の戦車、230輌の戦闘車両も配備されたようだ。ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相によると包囲軍は1万1000名だが、こうした情報が正確ならば、住民を殲滅できる陣容であり、ロシアを挑発する意味もあるのだろう。

 ジョン・ケリー米国務長官はロシアが軍事的な挑発行為を繰り返していると非難しているが、この人物の発言は次々に嘘だと判明している。予想されるクーデター政権の軍事行動を正当化するための布石だと考えた方が良いだろう。

 「イースター休戦」が宣言されていた4月19日の午前2時(現地時間)頃中、スラビャンスクに設置された反クーデター派の検問所が襲われて5名から7名が死亡、負傷者も出ていると伝えられている。その背景には大規模な包囲網が存在していたことになる。

 こうしたクーデター政権の軍事行動を支える意味もあり、アメリカ/NATOはポーランドやバルト諸国へ地上軍や戦闘機などを派遣し、黒海にはイージス艦などを入れている。ロシア軍のジャミングでイージス・システムが機能不全になったといわれる駆逐艦のドナルド・クックは黒海を出たようだが、交代する形でテーラーが配備され、フランスの偵察艇ドゥピュイ・ド・ロームは残っている。フランスはさらに駆逐艦デュプレクスも黒海へ入れるようだ。こうした動きに対抗してロシア軍は4月24日からウクライナとの国境近くで軍事演習を実施している。

 キエフのクーデター政権で首相代行を務め、クトリア・ヌランド米国務次官補の覚えがめでたいアルセニー・ヤツェニュクは4月26日、ロシア軍機が7回にわたって領空を侵犯したと記者に話しているが、担当大臣であるミハイロ・コバル国防相代行はこの話を否定している。この件についてキエフ政権の内部で話し合われたわけではないということだろう。ロシア側も領空侵犯の事実はないと反論している。

 つまり、ヤツェニュク首相代行は個人的なルートで入手した情報を独断で記者に話したことになる。「ロシア軍の攻撃性」を宣伝するため、アメリカ政府の指示でビヤツェニュクは国防相代行も否定するような話をしたということだろう。

 こうしたアメリカ/NATOの攻撃的な動きに対し、イギリスの対外情報機関MI-6の長官はデイビッド・キャメロン英首相に対し、ウクライナ政府を支援するために西側が軍隊を派遣するのをウラジミール・プーチン露大統領は傍観しないと警告したという。

 NATO軍の内部ではネオコンと同様、キエフのクーデター政権を軍事支援するべきだという意見があるのだが、MI-6やイギリス軍の情報機関のトップはイギリスや「西側」が何らかの軍事行動を起こせばロシアと全面戦争になる危険性があるというわけだ。

 ウクライナの状況を理解するためには、キエフの暫定政権が選挙を経て選ばれたわけでなく、「西側」の傀儡政権にすぎないということから出発する必要がある。だからこそネオ・ナチの暴力を必要としたわけで、アメリカの傭兵会社から戦闘員を雇い、ネオ・ナチで6万人規模の「親衛隊」を組織する必要があった。

 ひとつの都市を殲滅するにはこれで十分かもしれないが、ウクライナ全域を制圧するためには足りない。すでに治安機関や軍の内部から離脱者が出ているようだが、軍事作戦の内容次第では造反者が増えて反クーデター軍が創設され、内戦が始まる可能性がある。そうなると東部の地域は独立を宣言、クリミアと同じようになるだろう。そうした事態を押さえ込むためにアメリカ/NATO軍が軍事侵攻すれば、ロシア軍も動くと見なければならない。

 アメリカ/NATOがロシアとの核戦争も辞さずにウクライナを軍事制圧しようとしている理由はいくつか頭に浮かぶ。日本では軍需産業のカネ儲けが指摘されるが、それだけではない。

 昨年12月13日、ヌランド次官補は米国ウクライナ基金の大会で演壇に登場、1991年からウクライナを支援するため、50億ドルを投資したと発言している。その際、彼女の背後には巨大石油企業シェブロンのマークが飾られていたことでもわかるように、ウクライナの天然ガス開発はアメリカ政府を動かしている大きな力のひとつ。アメリカ企業がウクライナで油田を開発、ロシアから自立させようという思惑をジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米国大使は口にしたという。

 しかし、それ以上に大きな動機はアメリカ支配層の世界戦略にある。アメリカの元外交官、クリストファー・ヒルが現在のロシアについて、「新世界秩序」への「裏切り」だと批判したことは紹介済みだが、この「新世界秩序」を築く動きが活発化したのは1970年代のこと。その中心にはズビグネフ・ブレジンスキーがいた。投機家のジョージ・ソロスはプロジェクトの拠点となる組織を創設している。

 このソロスの手先になって巨万の富を築き、「祖国」なる政党をつくったユリア・ティモシェンコはネストル・シュフリチ元国家安全保障国防会議副議長との電話でロシア人を殺すと繰り返している。副大統領時代のリチャード・チェイニーも似たことを口にしてたという。ロバート・ゲーツ元国防長官の回顧録『任務』によると、ソ連やロシア帝国が消滅するだけでは不十分で、ロシアという存在自体を抹殺するべきだとチェイニーは話していたというのだ。(Robert M. Gates, “Duty,” Alfred A. Knopf, 2014)

 エドワード・スノーデンの内部告発で電子情報機関による世界規模の監視活動が話題になっているが、そのプロジェクトは1970年代に発覚している。1990年代に入ると、通信の傍受、情報の集積と分析が世界的な問題になったが、これはUKUSA(イギリスとアメリカの電子情報機関の連合体)を使った米英の世界支配戦略がベースにあった。

 そうした視点から世界の人びとはこの問題を見ていたのだが、日本では「企業スパイ」のレベルで語られるだけだった。日本の支配層は目先の利益にしか興味がないと言われるが、マスコミ、リベラル派、革新勢力なども目先の利益にしか関心を示さないのが実態。ウクライナの問題でも戦争ビジネスのカネ儲けという視点だけで語る人がいるが、根本的な問題はアメリカ支配層の世界支配戦略にある。

 原発問題で人気が出たような新聞も国際問題では質の悪いネオコンの拡声器にすぎない。これまで嘘をつき、破壊、殺戮、略奪を続けてきたアメリカの流す情報を垂れ流しているわけだが、本当にそうした情報を信じるほど愚かな人たちではないだろう。テレビは論外として、新聞、雑誌、出版、市民運動、政党・・・権力者が許す範囲に止まりながら権力者を批判するような印象を維持するためには、権力者に騙されている振りをするしかない。





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最終更新日  2014.04.28 01:15:18



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