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《櫻井ジャーナル》

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2014.06.30
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 安倍晋三だけでなく、民主党の岡田克也たちも集団的自衛権の行使を容認させるために必死だ。菅義偉官房長官は7月1日に閣議決定したいと記者に言ったようだが、自民党の高村正彦副総裁は6月20日までに権利行使を容認するための閣議決定をするべきだと語っていた。予定通り進んでいないということは、それだけ反対が強いということにほかならない。

 それほど不評の集団的自衛権をごり押ししようとするのは、自分たちの「雇い主」であるアメリカ支配層に命令されているからだ。かつてアメリカのNSC(国家安全保障会議)で上級アジア部長を務めていたマイケル・グリーンCSIS副所長がウクライナ問題に絡んでロシアを批判集団的自衛権の重要性を主張している背景はここにある。

 1994年に細川護煕政権の諮問機関「防衛問題懇談会」が「日本の安全保障と防衛力のあり方(樋口レポート)」を発表した際、日本が自立の道を歩き出そうとしていると考えて反発したのが国防大学のスタッフだったグリーンとパトリック・クローニン。友人のカート・キャンベル国防次官補を介してジョセフ・ナイ国防次官補やエズラ・ボーゲルに会い、自分たちの考えを売り込んでいる。その結果、1995年に「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」が公表されることになった。

 ナイ・レポートでは、10万人規模の駐留アメリカ軍を維持し、在日米軍基地の機能を強化、使用制限は緩和/撤廃されるべきだとしている。当然、アメリカ軍の基地が集中している沖縄では怒りのエネルギーが高まり、アメリカ兵による少女レイプ事件でそのエネルギーが爆発する。その延長線上に集団的自衛権はある。

 グリーンはロシアと中国との関係について「ロシアと中国が接近するのは、お互いに都合が良いからにすぎない」からであり、中国は「プーチンの味方をすることで米国と対立するつもりはない」うえ、ロシアは「極東地域で中国の圧倒的に多い人口を恐れている」とも主張している。

 リビア、シリア、ウクライナと続いたアメリカの体制転覆プロジェクトはロシアと中国に少なからぬ影響を及ぼした。ロシアはリビアでアメリカへの信頼感をなくし、若手のエリートは親米派が多いと言われる中国もアメリカとの関係を見直している。そのひとつの結果が5月21日にロシアと中国との間で結ばれた天然ガスの供給契約。今後30年間にロシアは中国へ毎年380億立方メートルを供給するという内容で、総額は約4000億ドル。中国はロシアにとって巨大なマーケットでもある。

 アメリカの基本戦略は、敵を分断して個別撃破していくというもの。EUの上層部はカネの力で籠絡、アメリカへ留学する中国の若手エリートを取り込み、ロシアを孤立化させて潰し、次に中国、日本という手順だったはずだが、この目論見が崩れている。グリーンの主張は、かつて自分たちが机の前で書き上げた「空論」にすぎない。

 最近では籠絡したはずのEUの内部でアメリカに反発する動きも出てきた。ドイツやフランスがロシアと接触するようになり、オーストリアは黒海を横断してEUへ天然ガスを運ぶ「サウス・ストリーム」の建設でロシアと協力する契約を結んだ。北にはバルト海からドイツへつながる「ノード・ストリーム」も計画されるなど、予定通りに進めばウクライナを完全に迂回できるようになる。

 CIAの秘密刑務所を設置させ、ウクライナのネオ・ナチを軍事訓練したポーランドでもアメリカへの反発はあるようだ。例えば、ラドスラフ・シコルスキー外相は元財務相に対し、ポーランドとアメリカの同盟は無価値であり、全く有害であり、ドイツやロシアとの争いに発展するとしたうえで、アメリカ人に「フェ●チオ」をしているので、すべてが最高になるとポーランド人は思っていると自嘲気味に語っている。この会話は盗聴され、外部に漏れてしまった。

 ロシアを殲滅する重要な国だとアメリカの好戦派が考えているウクライナでは、東部や南部で「民族浄化」が進行中である。今年2月に「西側」の巨大資本と結びついた「オリガルヒ」とネオ・ナチがクーデターで合法政権を倒し、そのクーデター政権に反発して分離独立を目指している人びとを攻撃しているのだ。

 5月2日にはオデッサでクーデター政権を拒否する住民が虐殺されたのは象徴的な出来事だった。この時に労働組合会館で殺されたのは50名弱とメディアではされているが、これは上の階で死体が発見された数。多くは地下室で惨殺され、犠牲者の数は120名から130名と言われている。

 この虐殺は事件の10日前にキエフで開かれた会議で始まる。出席者はアレクサンドル・トゥルチノフ大統領代行、アルセン・アバコフ内相代行、バレンティン・ナリバイチェンコSBU長官代行、アンドレイ・パルビー国家安全保障国防会議議長代行で、オブザーバーとしてドニエプロペトロフスクのイゴール・コロモイスキー知事も意見を求められたという。コロモイスキーはイスラエル系のオリガルヒ(一種の政商)で、赴任先へアメリカの傭兵を引き連れて乗り込んだ人物。ウクライナにおける民族浄化の黒幕だと見なされている。

 最近、この人物が今年4月に組織した武装集団アゾフが注目されている。メンバーは200名ほどで、右派セクターの中から流れてきたという。その約半数は犯罪歴があり、6月14日にキエフのロシア大使館を襲撃したグループの中心はアゾフだったとされている。東部での制圧作戦にもこの団体は参加、非武装の住民を殺害している。

 ペトロ・ポロシェンコ大統領はコロモイスキーと対立関係にあるようだが、IMFからの圧力で東部や南部を制圧しなければならないため、やはり民族浄化には前向き。ファシストが政権の中枢にいるキエフ政権を拒否している東部や南部の住民を説得することは不可能な状況で、あとは殺害するか追放するしかない。

 その前段階として行ったのが一時的停戦の宣言。それには武装解除と国外追放の要求がついている。つまり、全面降伏しろということ。「停戦」だけを取り上げるのは正しくない。当然、ポロシェンコ政権は分離独立派から拒否されることを予想、本格的な軍事作戦を始めるつもりだったのだろうが、ロシア政府が逆手にとって話し合いへ持ち込もうとしている。

 ポロシェンコはロシアと交渉する姿勢を見せたが、これに怒ったのがクーデターを実行したネオ・ナチ。対ロシア強硬派の中心にはコロモイスキーがいて、停戦の中止、ドンバスでの戒厳令の導入、EUとの自由貿易圏の即時批准などを求めている。IMFや「西側」の巨大資本を連想させる要求だ。





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最終更新日  2014.07.01 01:36:23



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