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ウクライナ東部、ドネツクにある戦略的に重要なノボアゾフスクを反キエフ軍(ドネツク人民共和国の義勇軍)が制圧したと伝えられている。キエフのペトロ・ポロシェンコ政権は「ウクライナにロシア軍が導入された」と証拠を示すことなく発表したが、ロシア側はそうした事実はないとしている。アメリカ政府も記者会見で同じような主張をしているのだが、表現は曖昧。そこで、その点を記者から質問されたが、例によってはぐらかすだけだった。
本ブログでは何度も書いていることだが、今年2月に西側の支援を受けてクーデターを成功させたキエフ政権はオリガルヒ(一種の政商)とNATOの訓練を受けたネオ・ナチで、反ナチ感情の強い東部や南部の住民はクーデター政権を拒否、分離独立、あるいは連邦制を要求していた。クーデター前から存在するウクライナの軍、情報機関、治安機関の内部にはクーデター政権を快く想わない人びとがいて、クーデター政権を引き継いだポロシェンコ大統領も信頼されているわけではない。 そうした事情があるため、クーデター体制になった直後、2月の段階で議会は6万人規模の国家警備軍(親衛隊)を創設する法律の制定を採択、そのメンバーの中心はネオ・ナチが収まっている。その一方、右派セクターは約800人の準軍事組織「ドンバス」を創設した。 東部や南部の民族浄化作戦で黒幕的な存在だとされているドニエプロペトロフスクのイゴール・コロモイスキー知事の場合はアメリカの傭兵会社「アカデミ(旧社名はブラックウォーター)」の戦闘員を雇っているだけでなく、私兵を組織している。アゾフ、アイダル、ドンバス、ドニエプルの4部隊で、ドニエプルは約2000名規模。アカデミの戦闘員約400名はウクライナ東部の制圧作戦に参加しているとも伝えられている。 そのほかイスラエル、グルジア、ルーマニア、スウェーデン、ドイツなどからも戦闘員がウクライナ入りし、グルジア出身者はブーク防空システムを操作する訓練を受けているとも言われている。 こうした戦闘集団を指揮するため、アメリカ政府はCIAやFBIの専門家数十名を顧問として送り込んだと報道されているが、ここにきて国防総省は戦略と政策の専門家チームをキエフへ数週間以内に派遣すると発表した。それだけキエフ軍が苦戦しているということにほかならない。何しろ住民側にはウクライナの軍隊、情報機関、治安機関からの離脱者や退役兵が参加、兵士の士気は住民側が遥かに高い。こうした地上軍の劣勢を航空兵力やミサイルによる無差別攻撃でカバーしているのが実態だ。 現在、ポロシェンコ政権はIMFの命令に従って東部や南部を制圧しているが、思惑通りには進んでいないことはノボアゾフスクの状況を見てもわかる。このまま進めばウクライナは経済的に破綻する可能性が高く、打開策を探るため、8月26日にベラルーシのミンスクでロシアのウラジミル・プーチン大統領やEUの幹部らと会談したのだろう。が、こうした動きをアメリカ政府やキエフ政権の一部は快く思っていない。 アメリカがウクライナを制圧しようとしている目的はエネルギーや穀倉地帯の支配だけではない。ロシアの命運はウクライナが握っているとアメリカ政府は考え、ウクライナを制圧しようとしている。ズビグネフ・ブレジンスキーがまとめた戦略だが、その源はオットー・フォン・ビスマルクだともいう。 もしアメリカがウクライナの制圧に失敗、EUとロシアが接近することになるとアメリカはヘゲモニーを失う。これまで「勝てば官軍」ということで、傍若無人に振る舞ってきたアメリカだが、そうしたことができなくなるだけでなく、「負ければ賊軍」ということにもなりかねない。 そうした事態を避けるため、アメリカはEUとロシアとの接近を防ごうとしている。場合によってはNATOを投入してロシアと開戦という展開もありえるのだが、そうなれば核兵器が使われると思わなければならない。オランダ最大の新聞、テレグラーフ紙などは公然とNATOの軍事介入を求めている。この新聞はEU、いやヨーロッパ人の消滅など意に介していないということだ。 アメリカ支配層の中には次の戦争も過去の2大戦と同様、ヨーロッパ、せいぜい東アジアを含むユーラシアで戦われるだけだと考えている人たちもいそうだが、そうした時代ではない。そうしたことを示すため、ロシアはアメリカ本土の近くに爆撃機を飛ばした。日本もアメリカに従っていれば「勝てば官軍」の「お零れ」を頂戴、アジアで傍若無人に振る舞えるという発想を捨てる時期にきている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2014.08.29 03:01:26
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