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《櫻井ジャーナル》

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2016.05.14
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 ブラジルの上院はジルマ・ルセフ大統領を最大6カ月の職務停止にすることを5月12日に決め、ミシェル・テメル副大統領が暫定大統領に就任したのだが、そのテメルがアメリカのNSC(国家安全保障会議)や南方軍に機密情報を流していたことを内部告発支援団体のWikiLeaksが明らかにした。4月の段階でルセフ大統領はテメルとエドアルド・クニャ下院議長がクーデターの首謀者だと批判していた。

 クーニャ下院議長は最近、スイスの秘密口座に数百万ドルを隠し持っていることが発覚し、ルセル大統領の弾劾で先導役を務めたひとり、ブルーノ・アラウージョも巨大建設会社から違法な資金を受け取った容疑をかけられている。2018年の大統領選挙へ出馬するというジャイ・ボウソナル下院議員の場合、弾劾を問う採決の際、軍事政権時代に行った拷問で悪名高いカルロス・アルベルト・ブリリャンテ・ウストラを褒め称えていた。

 薄弱な根拠でルセフが攻撃されている理由は、言うまでもなく、アメリカの巨大資本にとって邪魔な存在だからであり、不正を働いている可能性の高いグループが咎められないのはそうした巨大資本の手先だからだ。

 アメリカの支配層がルセフを排除したがっている理由のひとつはブラジルがBRICSの一角を占めているからだろう。BRICS、つまりブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカはアメリカの巨大資本を頂点とする支配システムに対抗する勢力になりつつある。

 南アメリカではブラジルだけでなく、自立した国を築こうとしている政権は揺さぶられている。アルゼンチンのクリスティーナ・キルシュネル前大統領が起訴されたのもそうした動きのひとつ。クリスティーナの夫、ネストルも大統領だったが、彼によると、大統領時代のジョージ・W・ブッシュは「経済を復活させる最善の方法は戦争」だと力説、「アメリカの経済成長は全て戦争によって促進された」と話していたという。この証言はオリバー・ストーンが制作したドキュメンタリー、「国境の南」に収められているのだが、ブッシュが言うところの「経済」とは巨大資本の「儲け」を意味している。

 16世紀にスペイン人が侵略、財宝や資源を略奪してヨーロッパに莫大な富をもたらしたが、20世紀の直前に支配者がアメリカに替わる。北アメリカの先住民を殲滅した次に目を南に向けたのだ。

 侵略の幕開けは1898年。キューバのハバナ港に停泊していたアメリカの軍艦メイン号が爆沈、アメリカはスペインが実行したと主張して宣戦布告、米西戦争が始まる。この戦争に勝利したアメリカはスペインにキューバの「独立」を認めさせ、プエルトリコ、グアム、フィリピンを買収することになった。この年、ハワイも支配下においている。フィリピンは中国市場へ乗り込む橋頭堡として位置づけられた。

 1900年の大統領選で再選されたウィリアム・マッキンリーは翌年の9月に暗殺され、副大統領のセオドア・ルーズベルトが跡を継いだ。そして始められたのが棍棒外交。対外債務で苦しむベネズエラに内政干渉、ドミニカやキューバを保護国化、次に大統領となったウィリアム・タフトも棍棒外交を継承する。この政策は1933年にフランクリン・ルーズベルト大統領が善隣外交を始めるまで続いた。

 第2次世界大戦後はCIAによる破壊活動、暗殺、クーデターでアメリカ支配層にとって都合の悪い体制は倒されてきた。例えばユナイテッド・フルーツ(1970年にユナイテッド・ブランズ、84年からチキータ・ブランズに名称を変更)に支配され、「バナナ共和国」と呼ばれていたグアテマラでは、1954年にクーデターでヤコボ・アルベンス・グスマンを排除、1973年にはチリのサルバドール・アジェンデ政権をクーデターで倒し、新自由主義的な政策が導入された。

 1999年にベネズエラ大統領になったウーゴ・チャベスもアメリカの巨大資本に嫌われていたひとりで、2002年にクーデターが計画された。イラン・コントラ事件でも登場するエリオット・エイブラムズ、キューバ系アメリカ人で1986年から89年にかけてベネズエラ駐在大使を務めたオットー・ライヒ、そして1981年から85年までのホンジュラス駐在大使で後に国連大使にもなるジョン・ネグロポンテが黒幕だと言われている。この計画は、事前にOPECの事務局長を務めていたベネズエラ人のアリ・ロドリゲスからチャベスへ知らされたため、失敗に終わった。

 WikiLeaksが公表したアメリカの外交文書によると、2006年にもベネズエラではクーデターが計画されている。「民主的機関」、つまりアメリカの支配システムに組み込まれた機関を強化し、チャベスの政治的な拠点に潜入、チャベス派を分裂させ、アメリカの重要なビジネスを保護し、チャベスを国際的に孤立させるとしている。

 今回、明らかにされたテメルのNSCや南方軍に宛て文書が作成されたのも2006年。この年には、ロシアと中国の長距離核兵器をアメリカの先制第1撃で破壊できるとするキール・リーバーとダリル・プレスの論文がフォーリン・アフェアーズ誌(CFR/外交問題評議会が発行)に掲載されている。

 また、2007年3月5日付ニューヨーカー誌に、アメリカはサウジアラビアやイスラエルと共同でシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラに対する秘密工作を開始したとするシーモア・ハーシュのレポートが載った。この3カ国の手先がワッハーブ派/サラフ主義者だ。

 この当時、アメリカの支配層は武力で世界制覇を実現しようと動き始めていたように見える。2009年6月にはホンジュラスでクーデターがあり、マヌエル・セラヤ政権が倒されたが、このクーデターの中枢には少なくとも2名のSOA卒業生がいた。

 現在、アメリカ政府はホンジュラスのクーデター政権を容認しているが、現地のアメリカ大使館は国務省に対し、クーデターは軍、最高裁、そして国会が仕組んだ陰謀であり、違法で憲法にも違反していると報告している。つまり、クーデター政権には正当性がないと明言している。この正当性のない政権は翌2010年、最初の半年だけで約3000名を殺害したという報告がある。

 クーデターを支援していたひとり、ミゲル・ファクセが麻薬取引が富の源泉であることもアメリカ側は認識していた。ちなみに、ミゲルの甥にあたるカルロス・フロレス・ファクセは1998年から2002年にかけてホンジュラスの大統領だった人物である。

 2010年9月には尖閣諸島の付近で操業していた中国の漁船を海上保安庁が「日中漁業協定」を無視する形で取り締まり、それまで「棚上げ」になっていた尖閣列島の領有権問題を引っ張り出し、日中関係を悪化させて東アジアの軍事的な緊張を高めたが、2011年春には中東/北アフリカで体制転覆プロジェクトを始動させている。

 リビアやシリアへ手先として送り込まれたのがアル・カイダ系武装集団であり、そこからダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)は派生した。2014年にはウクライナでネオ・ナチを使ってクーデターを実行しているが、そうした侵略プロジェクトはシリアやウクライナで予想外の反撃にあい、苦境に陥った。そうした中、始まったのが南アメリカでの政権転覆工作。これを「帝国の逆襲」と呼ぶ人もいる。

 こうした逆襲を招く最大の理由は、アメリカ支配層と現地の手作が築いた支配システムを放置しているからだ。戦いが長くなれば、当然、資金力のある方が有利。そうした勢力は攻撃態勢を整えるため、国を上回る資金力をもつ私的権力の活動を認める「民主主義」を要求する。こうした「民主主義」の実態はファシズムであり、それを認めている限り、真の民主主義は実現されない。






最終更新日  2016.05.15 03:16:21


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