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《櫻井ジャーナル》

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2016.06.18
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 シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すために軍事介入すべきだとする覚書にアメリカ国務省の外交官51名が署名したという。1999年にアメリカはユーゴスラビアを先制攻撃、殺戮と破壊をもたらした際、その推進役はマデリン・オルブライト国務長官だった。外交官が「ハト派」で軍人が「タカ派」とは一概に言えないということであり、文民統制が機能していても侵略戦争は起こりうるということだ。

 現在、アメリカが進めている世界制覇プロジェクトが始まったのは、ソ連が消滅して間もない1992年の初め。国防総省のDPG草案という形で基本計画は作成されている。アメリカが「唯一の超大国」になったと認識したうえで、自立した体制、潜在的なライバルを破壊し、力の源泉である資源を支配しようと考えた。潜在的なライバルと見なされたのは旧ソ連圏、西ヨーロッパ、東アジアなど。膨大な石油資源を抱える西南アジアも支配の対象とされた。

 このDPG草案が作成された当時の大統領はジョージ・H・W・ブッシュ(父親)であり、国防長官はリチャード・チェイニー、国防次官はポール・ウォルフォウィッツ。国防総省内のシンクタンク、ONA(ネット評価室)で室長を務めていたアンドリュー・マーシャルのアイデアに基づき、ウォルフォウィッツが中心になって書き上げられたと言われている。そこで、この考え方は「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」と呼ばれている。これを元にした報告書「米国防の再構築」をネオコン系シンクタンクのPNACは2000年に発表、それに従ってジョージ・W・ブッシュ(息子)政権は政策を遂行した。

 DPG草案が作成される前年、ウォルフォウィッツはシリア、イラン、イラクを5年で殲滅すると口にしたという。これは欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)の元最高司令官、ウェズリー・クラークの話だ。予定通りに進まなかったのは、ブッシュ・シニアが再選されず、ビル・クリントンが大統領に就任したからだと見られている。この政権はブッシュ政権に比べてネオコン/シオニストの影響力が弱かった。

 そうした中、ネオコンと強く結びついていたのがヒラリー・クリントン。後にウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを仕掛けたビクトリア・ヌランドとも親しい。また、ズビグネフ・ブレジンスキーの弟子にあたるオルブライトが1997年から国務長官を務めることになったのはヒラリーの働きかけと言われている。また、ムスリム同胞団と関係の深いヒューマ・アベディンをヒラリーは側近にしている。

 2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターやワシントンDCの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されるとジョージ・W・ブッシュ政権は本格的な調査もせずにアル・カイダが実行したと主張、そのアル・カイダと敵対関係にあったイラクを2003年に先制攻撃してサダム・フセイン体制を破壊、ウォルフォウィッツが1991年に口にした3カ国のうちひとつが仕留められた。

 しかし、その段階では攻撃対象国はさらに広がっていた。この攻撃から10日後にペンタゴンを訪れたウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官は、ドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺でイラク、シリア、イラン、レバノン、リビア、ソマリア、スーダンを攻撃するプランができていたという。

 イラクを破壊した後、遅くとも2007年の段階でアメリカはサウジアラビアやイスラエルと共同でシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラに対する秘密工作を開始した。これは調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュが2007年3月5日付けニューヨーカー誌に書いている。

 2011年3月にアメリカはイギリスやフランスといったEU加盟国やサウジアラビアをはじめとするペルシャ湾岸産油国、トルコ、そしてイスラエルとシリア侵略を開始した。侵略の拠点になったのがトルコにある米空軍インシルリク基地で、侵略部隊の戦闘員はそこで軍事訓練を受けていたとされている。教官はアメリカの情報機関員や特殊部隊員、イギリスとフランスの特殊部隊のメンバー。

 そこから国境を越えてシリア領内へ侵入するのだが、兵站線もトルコからシリアの前線まで伸びている。2014年1月にはトルコ軍の憲兵隊が武器/兵器を含む物資を法律に違反してトルコからシリアへ運ぼうとしていたトラックの車列を摘発、その事実をジュムフリイェト紙は昨年5月に映像付きで報道した。

 この工作はレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領がトルコの情報機関MITを使って行っていたことで、報道したジュムフリイェト紙のジャン・ドゥンダル編集長とアンカラ支局長のエルデム・ギュルを昨年11月26日に逮捕、その2日後に摘発を指揮したウブラフム・アイドゥン憲兵少将、ハムザ・ジェレポグル憲兵中将、そしてブルハネトゥン・ジュハングログル憲兵大佐が逮捕された。編集幹部のふたりには今年5月、懲役5年以上の判決が言い渡された

 シリアを侵略しているアル・カイダ系武装勢力やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)へトルコから物資が運び込まれていることは以前から知られていて、2014年11月にはドイツのDWがその事実を報じている。

 イランのテレビ局プレスTVの記者だったセレナ・シムもこうした人や物資の動きを調べていたひとりで、トルコからシリアへダーイッシュの戦闘員を運び込むためにWFP(世界食糧計画)やNGO(非政府組織)のトラックが利用されている事実をつかみ、それを裏付ける映像を入手したと言われている。そのシムは2014年10月19日に「交通事故」で死亡したが、その前日、MITから彼女はスパイ扱いされ、脅されていたという。

 昨年10月21日にはトルコの国会議員エレン・エルデムらは公正発展党の事件への関与を指摘する報告書を公表し、アダナの検察当局はサリンがトルコからシリアへ運び込まれたとする情報を調べ始めたとしている。エルデムらによると、捜査記録には化学兵器の材料になる物質がトルコからシリアへ運び込まれ、そこでダーイッシュが調合して使ったとしているという。この事実を公表した後、エルデム議員らは起訴の脅しをかけられた。

 調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、リビアのムアンマル・アル・カダフィ体制が崩壊した後、リビア軍の倉庫から武器/兵器が持ち出されてトルコへ運ばれているが、その中には化学兵器も含まれていた。

 輸送の拠点になったのはベンガジにあるCIAの施設で、そうした事実をアメリカ国務省は黙認、輸送にはマークを消したNATOの輸送機が使われたとも伝えられている。2012年9月11日に襲撃されたベンガジのアメリカ領事館も拠点のひとつ。そこで、殺されたクリストファー・スティーブンス大使はその前日、武器輸送の責任者だったCIAの人間と会談、襲撃の当日には武器を輸送する海運会社の人間と会っている

 アメリカ政府は自分たちの手下を使ってダーイッシュを攻撃しているとしているが、昨年9月30日にロシア軍が空爆を始めるまで攻撃した振りをしていただけ。実際に攻撃したのはシリアのインフラで、アル・カイダ系武装勢力やダーイッシュに対しては物資を「誤投下」していた。侵略軍が支配地を広げていたのは、こうした事情があったからだ。

 バラク・オバマ政権は「穏健派」が存在しているかのように宣伝しているが、これはアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)も否定している。2012年8月にDIAが作成した文書によると、反シリア政府軍の主力はサラフ主義者(ワッハーブ派)、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQI(アル・ヌスラはその別名だとしている)で、西側、ペルシャ湾岸諸国、そしてトルコの支援を受けていると報告しているのだ。

 この報告書が作成された当時のDIA局長、マイケル・フリン陸軍中将によると、DIAの警告を無視してアメリカ政府が決定した政策によってAQI/アル・ヌスラやISは勢力を拡大、支配地を作り出せたのである。

 アル・カイダ系武装集団やダーイッシュの勢力拡大を懸念した軍人はフリン以外にもいた。2011年10月から15年9月まで統合参謀本部の議長を務めたマーチン・デンプシー陸軍大将もそのひとりで、バラク・オバマ政権の政策を懸念して2013年秋からシリアを侵略していた武装集団に関する情報をホワイトハウスの許可を得ず、シリア政府へ伝え始めたという。このデンプシーが統合参謀本部議長を辞めた直後にロシア軍が空爆を始めたのは偶然だろうか?

 1970年代の終盤にズビグネフ・ブレジンスキーはソ連軍をアフガニスタンへ引き込むために秘密工作を実施、そのソ連軍と戦うためにサウジアラビアのカネで集められた戦闘員の中心はワッハーブ派やムスリム同胞団。その戦闘員をアメリカは軍事訓練、武器/兵器を供給した。このときの「成功体験」にすがり、アメリカの好戦派は同じことをシリアでも行っている。そう言えば、1980年のモスクワ・オリンピックをアメリカはボイコットしていた。

 1980年代に石油相場を下落させ、ソ連経済を揺さぶることに成功していたが、今回は失敗、アメリカとサウジアラビアが深刻な事態に陥って相場は上昇した。このように過去の「成功体験」は失敗の原因で、破滅に導きかねないことをアメリカの支配層は認識しているのだろうか?

 シリアでの戦闘は内戦でなく侵略戦争であり、侵略軍であるアル・カイダ系武装集団やダーイッシュの後ろ盾はアメリカ、イギリス、フランス、トルコ、サウジアラビア、イスラエルなどだ。状況によってタグを付け替えるが、実態は同じ。だからこそシリア国民はアサド政権を支持し、これだけの侵略を受けても耐えてきたのだ。





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最終更新日  2016.06.19 02:34:23



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