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《櫻井ジャーナル》

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2017.07.13
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イラクのハイデル・アル・アバディ首相がモスルでダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)に勝利したと宣言、西側メディアは大きく取り上げている。ダーイッシュの支配地が縮小しはじめたのはロシア軍がシリア政府の要請で軍事介入した2015年9月30日以降のこと。その前、アメリカ軍がシリア政府の承認を得ないまま勝手に空爆を始めてからは支配地を広げていた。

モスルのダーイッシュが制圧したのは2014年1月にファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言してから5カ月後のことだった。その際、武装勢力はトヨタ製小型トラック「ハイラックス」を連ねて走行、自分たちの存在をアピールしていたが、アメリカ軍はそのパレードに手を出していない。アメリカにはスパイ衛星、偵察機、通信傍受、そしてエージェントによる情報網などで動きはつかんでいたはずで、知らなかったという言い訳は通用しない。

こうした状況の中、イラクの首相だったヌーリ・アル・マリキは2014年3月にサウジアラビアやカタールが反政府勢力へ資金を提供していると批判、ロシアへ接近する姿勢を見せていた。サウジアラビアやカタールだけでなく、アメリカがダーイッシュの黒幕だと認識していたのだろう。

そして4月に議会選挙があり、マリキが党首を務める法治国家連合が第1党になった。本来ならマリキが首相を続けることになるのだが、指名されていない。アメリカ政府が選挙に介入したと見られている。マリキはペルシャ湾岸産油国を批判しただけでなく、アメリカ軍の永続的な駐留やアメリカ兵の不逮捕特権を認めなかった人物で、アメリカ支配層には嫌われていた。

しかし、新しく首相になったハイデル・アル・アバディ首相もアメリカに背き、ロシアがシリア政府の要請で空爆を始めると、イラクもロシアに空爆を頼みたいという意思を示した。ロシア軍が本当にダーイッシュやアル・カイダ系武装集団、つまりサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を主力とする侵略勢力を攻撃するのを見て、心が動いたのだろう。

それに対し、アメリカはジョセフ・ダンフォード米統合参謀本部議長を10月20日にイラクへ送り込む。同議長はイラク政府からロシアへ支援要請をするなと恫喝したようだが、その後もロシア、シリア、イランとの連携は続く。

ダーイッシュが売り出される2年前の時点で、アメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)は反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団だと指摘、バラク・オバマ政権が宣伝していた「穏健派」は存在しないとする報告書をホワイトハウスへ提出している。その中で東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告されている。それがダーイッシュという形で現実になった。

そうした経緯があったこともあり、2014年にダーイッシュが登場するとオバマ政権の内部で激しい対立が起こり、その年の8月にDIA局長だったマイケル・フリン中将は解任されている。ファルージャやモスルをダーイッシュに支配させることはオバマ政権の主流派が望んでいたことだと言えるだろう。その翌月、マーティン・デンプシー統合参謀本部議長(当時)はアラブの主要同盟国がダーイッシュに資金を提供していると議会で証言している。

退役から1年後の2015年8月、フリン元DIA局長はアル・ジャジーラの番組へ出演、その際に自分たちの任務は提出される情報の正確さをできるだけ高めることにあり、情報に基づく政策の決定はバラク・オバマ大統領が行うと指摘している。つまり、オバマ政権の決定がダーイッシュの勢力を拡大させたというわけだ。これは事実である。

フリンと同じようにダーイッシュやアル・カイダ系武装集団を危険だと考えていたデンプシー統合参謀本部議長は2015年9月25日に退役、その5日後にロシア軍はシリアで空爆を始めた。オバマ政権のメッセージに対する回答だ。

その後、ダーイッシュやアル・カイダ系武装勢力は急速に弱体化、アメリカやサウジアラビアは約9000名の「ムジャヒディン」をモスルからシリアのデリゾールやパルミラへ安全に移動させることで合意していたとされているが、一部はシリアへは向かわずに出身国へ戻ったようである。

この段階でバシャール・アル・アサド政権を倒して傀儡体制を樹立するという当初の目論見は蜂起、シリア北部を切り取る方針に切り替えたのだろう。そのプランでもラッカやデリゾールは重要。ラッカはアメリカ軍が制圧、デリゾールへ戦闘員を集中させる。

そのデリゾールへ向かっていたシリア政府軍をアメリカ主導軍のF-16戦闘機2機とA-10対地攻撃機2機が攻撃したのは2016年9月17日のことだった。空爆の7分後にダーイッシュの部隊が地上でシリア政府軍に対する攻撃を開始していることから、両者は連携していると見られている。28日には2つの橋を、30日にも別の橋2つをそれぞれ爆撃して破壊した。攻撃された当時、シリア政府軍はダーイッシュに対する攻撃を準備していた。また、アメリカ軍の偵察衛星のつかんだ情報が反政府軍へ渡されていた可能性が高いとする分析もある。

そうした流れの中でモスルをイラク政府軍が奪還したと宣伝されているのだが、アメリカはイラクの北部も切り取ろうとするはず。ダーイッシュにしろ、アル・カイダ系武装勢力にしろ、傭兵にすぎない。サウジアラビアなどが資金を出し、アメリカやイギリスが武器や兵器を提供、軍事訓練をするという仕組みが残っている限り、これからも出現する。タグが付け替えられるだけだ。





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最終更新日  2017.07.13 05:40:44



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