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カテゴリ:第3話 反乱前夜
やがて、アンドレスがこの地を訪れて2度目の春が過ぎた。 この時、既にアンドレスは17歳。 アパサの厳しい鍛錬のもと、彼は見違えるように逞しい若者に成長していた。 そして、その年の夏も過ぎる頃、アパサの指導はそれまでとはやや趣を変えたものとなっていた。 実際、ここにきてアンドレスの成長は目覚しかった。 1年半に及ぶ過酷なトレーニングの継続により基礎的な身体能力は高められ、アパサが徹底的に基本を叩き込んだ成果も実を結び、今や彼は棍棒をまるでサーベルのごとく軽々と自在に裁きながら、複数の相手を同時に圧倒するまでになっていた。 アパサが心理戦に持ち込もうとも、アンドレスはそれほど動揺することも、もはや無い。
「これからは、美しく、ということを念頭に置いてやってみろ。」 アンドレスは一瞬、耳を疑った。 どちらかと言えば、いかに泥臭く、血生臭くとも、何が何でも敵を倒す、ということを叩き込まれてきたのだ。 ましてや、「美しい」という単語がアパサの口から出たことに、まずアンドレスは驚いたし、決して嫌味な意味ではなく、意外でもあった。
余計な質問をすることで、これまで幾度と無くアパサの罵声を浴びてきたアンドレスだが、この時は思わず口をついて、そんな言葉が出てきてしまった。 アパサは、まじめな顔のまま「そうだ。美しく、戦え。」と繰り返した。 「おまえは、ただ敵を倒せればいいのではない。 美しく倒さねばならい。 あのギリギリの泥沼の戦場の真っ只中でもだ。 何故なら、おまえは、偶像にならねばならぬからだ。」
そろそろ夏の終わりも近い。 既に冷気を帯びた風が、再びこの乾いた高地を吹き渡る季節になっていた。 アンドレスは汗を拭く手を止めたまま、アパサの言葉の意味を何とか咀嚼しようとした。 しかし、その意味がよく分からない。 アパサは、「おまえの察しの悪さは相変わらずだな。」と嘯(うそぶく)くと、改めて真正面からアンドレスを見据えた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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