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カテゴリ:第6話 牙城クスコ
一方、アンドレスは、「行って参ります!!」と、トゥパク・アマルに、側近たちに、そして、恭順を示しながら見守る無数のインカ兵たちに、再び深い礼を払う。 彼を見送る兵たちの中には、義勇兵たちも含まれている。 そんな義勇兵たちの隊列の一隅から、コイユールも、そっと見送ってくれているかもしれない、と、ふっとそんな思いがアンドレスの胸中をよぎる。 (必ず、また…! コイユール!!)
トゥパク・アマル様を、どうかお願いいたします…――!! 側近たちに、インカ軍本隊の全ての兵たちに、そう心の中で強く訴えかけると、アンドレスは振り切るように踵を返した。 そして、己を待つ軍勢の方に決然と向かう。
それは、かの朋友ロレンソであった。 二人は深い感慨に溢れる目で、暫し、見つめ合う。 「アンドレス、存分に!!」 「ロレンソも!!」 互いに深く頷いた。
「アンドレス。 そなたの大切なお方のことは、わたしが必ずや、お守りいたす」 アンドレスは、ハッとした目で朋友を見る。 ロレンソは再び深く頷き、光を宿した目で微笑んだ。 「アンドレス、何も案ずるな。 今は、戦(いくさ)のことのみを!!」 「ロレンソ…!!」
アンドレスと目が合うと、マルセラは常と変わらぬ少年のような闊達な笑顔をつくり、きっぱりと言う。 「アンドレス様、ご武運を!!」 「マルセラも!!」 アンドレスは優しい瞳でマルセラを、そして、ロレンソを交互に見た。 「二人共、また会おう!!」 そして、心の中で、二人に深い真心を込めて言う。 (ロレンソ、マルセラ。 二人は、必ずや、幸せになってくれ…――!!) それから、アンドレスは、その身に備えた重厚なサーベルの感触を、その逞しい手でしかと確かめながら、己を待つ大軍団の方へと勇ましい足取りで歩み去った。
◆◇◆ご案内◆◇◆ 本日もお読みくださり、どうもありがとうございます。 今回にて「第六話 牙城クスコ」は終了となり、次回からは「第七話 黄金の雷(いかずち)」に入って参ります。 この後は、いよいよトゥパク・アマルの本拠地ティンタでの波乱の総決戦へと突入して参ります。 今後とも、どうぞよろしくお願いいたします!
◆◇◆◇◆Information◆◇◆◇◆ 『インカの野生蘭』: トゥパク・アマルやアンドレスが活躍したアンデスの森に、今も人知れず咲いている神秘の花たち…――アンデスやアマゾンを30年以上彷徨する写真家、高野潤氏の最新作。お薦めです!!
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