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カテゴリ:第8話 青年インカ
早くも、あのアレッチェが追っ手に混ざっているとなると、形勢は決して、自分たちに甘くは無いだろう。 フェルナンドを抱いて走るトゥパク・アマルの俊足に、さらなる加速がかかる。 ミカエラやイポーリトも、それに続いた。 その間にも、白人たちの常軌を逸した獰猛な怒声と罵声が、狂気を孕むスピードで、背後から着実に迫り来る。
「!!――伏せろ!! 水中へ!!」 トゥパク・アマルの声より速く、4人は反射的に水中に飛び込み、身を伏せた。
「撃ってきたか」 「ええ。 本気で、ここで殺す気かもね」
そして、ミカエラとイポーリトも水から上がらぬよう制しながら、低く言う。 「このまま水中に身を置き、水面ぎりぎりに身を屈めて進むのだ。 敵も闇の中での目くら撃ち――むしろ、我々を心理的に追い込もうとの算段であろう」
トゥパク・アマルの言葉を遮って、急に、イポーリトが凛とした鋭い声を上げた。 「イポーリト?」 「父上!! 人の叫び声がする! 後ろじゃなくって、前の方から!!」 「!」
その時、何かを隔てたような向こうから、微かに4人の耳に聞こえ来る声―――!! 『た…す…けて…くれ――…――!』 「!!!」 皆、暗闇の中に慣れてきた目を大きく見開き、言葉も失ったまま、互いの顔を見合わせた。 確かに、どこからか、人の微かな叫び声が聞こえるではないか!
本当に!? い…一体、誰が、こんなところに?!」 ずぶ濡れになりながらも、女神像のような綺麗な目元を今は張り裂けるほどに大きく見開いて、平素は沈着なはずのミカエラも、混乱と驚愕とで素っ頓狂な声を上げている。
≪トゥパク・アマル≫ ≪ミカエラ・バスティーダス≫ ≪イポーリト/フェルナンド≫ ≪ホセ・アントニオ・アレッチェ≫
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Last updated
2009.12.23 21:23:51
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