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カテゴリ:第8話 青年インカ
自分たちを探し回る役人たちのヒステリックな叫び声は、その後も暫く壁向こうで続いていたが、やがて別の場所を探しに行ったのか、次第に声は遠のいていった。 ……フゥ――ッ…――― 無意識のうちに、トゥパク・アマルたち家族4人の間から、深い、深い、安堵の溜息が漏れる。 が、その4人の溜息の合間を縫って、トゥパク・アマルの腕に囚われている何者かの方から、呻き声が聞こえてきた。 「…ウッ!……ウウ……」 ハッと思い出したように、トゥパク・アマルは、己の手によって堅く口を押さえ込まれている者の方に、意識を戻した。
「そうであった。 我らの命の恩人殿が、ここに……」 「恩人?」 ミカエラの相変わらずの毅然とした声も、今は安堵のためか、柔らかく響く。
完全なる暗闇が視界を支配しているため、高さも横幅も、どれほどの広さを為す空間なのか定かではなかったが、そこは、長身のトゥパク・アマルが普通に立ち上がっても天井につかえぬほどに十分な高さがあり、両手を広げて動いても空間の壁に当たらぬほどに、横幅も、決して、そう狭くはないことが分かる。
足元に気をつけて」 彼は、腕に捕らえている何者かを片手で押さえたまま、空いた手でフェルナンドの手を取って、ゆっくり歩みはじめた。 そのフェルナンドの手をイポーリトが取り、イポーリトの手をミカエラが取る。 彼らは暗闇の中、はぐれぬようにしっかりと手を結び合って、暫く、黙々と進んだ。
「ここは、自然の洞窟や何かではないようね? まるで、舗装された道路のようだわ。 道幅も高さも十分ね。 大人が横に並んで数名は歩けそう」 「その通りだ。 ここは、人が通るために、意図的に築かれたものだからな」 「え…!」
「歩いていて、もしかしたら、と思ったの。 ここは、インカ帝国時代の地下道ね?」
≪トゥパク・アマル≫ ≪ミカエラ・バスティーダス≫ ≪イポーリト/フェルナンド≫
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Last updated
2010.01.18 19:51:53
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