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カテゴリ:第8話 青年インカ
アンドレスは二人に深く頭を下げながら、しみじみと言う。 「あの…ロレンソ…、そして、マルセラ…、俺は君たちに何と礼を言っていいのか」 明らかに頬を上気させながら、声を詰まらせるアンドレス――その様子に、彼が、コイユールのことを言いたいのだと察したロレンソもマルセラも、微笑ましげに優しく目を細める。 ロレンソはアンドレスの肩に手を置いて、その顔を上げさせる。 「アンドレス、わたしたちは、ただ普通に軍を指揮して進んできただけだ。 コイユールは、その根は、我々のような貴族なんぞより、よっぽど逞しい。 我々が、特別に何かをした、というわけではなく、むしろ、コイユールに助けられたのは我々の方だったかもしれぬ。 もっとも、わたしが合流するまでは、マルセラ殿の一軍が負傷兵を抱えながらの退避を敢行されていたのだから、そのことを思えば、マルセラ殿の功労は並大抵のものではないと思うが」
再び、再会の歓喜が交わされる。 やがて、4人で再会の祝杯を交わしながら、戦場故の、ささやかながらも、祝宴の彩りを添えた晩餐を囲む。 アンドレス、ベルムデス、ロレンソ、マルセラ…――かつてトゥパク・アマルの元で共に戦ってきた、そのあまりにも懐かしい、そして、深い絆で結ばれた者同士の再会に、その場の空気には高揚と特別な親密さが芳しく香っている。
そして、アンドレスたち3人の若者たちも、その優れた徳と智恵と武芸とでトゥパク・アマルたち先代を支え続けてきた老賢者ベルムデスに、深い敬意と信頼を寄せていた。
「ロレンソ、そういえば、さっき、俺に何かを言いかけていたが…? トゥパク・アマル様が、牢で、どうとか……?」
そして、少し真顔になって、アンドレスと、それから、ベルムデスを交互に見渡す。 脇に座るマルセラは、「あのことね?」と、何かを察したような目になり、居住まいを正した。
≪アンドレス≫ ≪コイユール≫ ≪ロレンソ≫ ≪マルセラ≫
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