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カテゴリ:第8話 青年インカ
解放されたかと思った緊張が、再び、全身に走り、コイユールは咄嗟に身を縮めた。 頭が真っ白になって、背後から抱き竦められた姿のまま、微動だにできずにいる。 しかし、どうやら、それはコイユールだけでなく、背後のアンドレスも同様のようだった。 実際、コイユールを抱き締めてはみたものの、その彼自身の腕も、まだ、どこか怖々と遠慮がちで、震えているようでさえある。
その鼓動を感じながら、あたたかな腕の体温に包まれているうちに、彼女の緊張は、心からも、体からも、次第に自然に溶けてほぐれていった。
そこには、あれほど会いたかった、愛しく懐かしいアンドレスの姿―――。 アンドレスもまた、微かに頬を染めたまま、込み上げる愛おしさを噛み締めるようにコイユールを見つめている。
アンドレスの逞しい腕は、今度は、正面から、しっかりとコイユールを抱き締めた。 清らかな瞳を揺らしながら、目を見開いていたコイユールも、やがてアンドレスの腕に素直に身をあずけ、至福の表情で、ゆっくりとその瞼を閉じる。 「アンドレス…私も会いたかった……」
「コイユール。 髪をほどいているの、はじめて見た…」 「…えっ!」 再び、ぱっと目を見開き、コイユールはドキンと身を竦める。 「とても似合ってる」 「…!!」
「コイユール…本当に…どんなに会いたかったか……!!」 「約束だったもの…アンドレスとの…! また、必ず生きて会うって……」 「ああ…そうだ! 約束だった…コイユール!!」
「コイユール――…あの短剣は? まだ持ってる? クスコの陣営で別れる時に、俺が渡した……」
≪アンドレス≫ ≪コイユール≫
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