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カテゴリ:第8話 青年インカ
一方、クスコの牢を脱出して以来、追っ手の前からも、そして、インカの民の前からさえも、忽然と姿を消していたトゥパク・アマルは、果たして、この頃、何処にいたのであろうか―――。 彼は、この時、インカ軍本隊の一部と共にインカの天空都市マチュピチュ(Machu Picchu)にいた。
故に、この山岳の秘密都市は、敵軍が近づけば即座に察知し得る地の利を有しており、追っ手から身を隠すには最適な場所である。
インカを巨大な帝国へと導いた第9代皇帝パチャクティ(Pachacuti)によってインカの王族や貴族のための離宮として建設されたが、スペイン侵略後は、その自然の要害を生かして、インカの末裔たちが反乱の拠点としてきた場所でもある(註:マチュピチュの成立過程、及び、放棄等の経緯については、未だ確定的な定説が無いため、物語中の文章は、現時点での有力な見解に基づいて記載。なお、近年では、インカ帝国最後の都は、「エスピリトゥパンパ(聖なる平原)」と呼ばれる地で、マチュピチュではないとする説も有力である)。
インカ特有の精緻な石積建築の城壁に堅固に囲まれ、太陽神殿、宮殿、祭壇、住居等が階段式に並び、周囲に広がる長大な段々畑(アンデネス)は優れた灌漑設備を有して豊富な食料生産が可能であり、まさに要塞空中都市と呼ぶに相応しい立地と機能を有する。 しかしながら、インカ帝国侵略後200年以上も経た現在、トゥパク・アマルの眼下に広がるマチュピチュは、すっかり廃墟の遺跡と化していた。
≪トゥパク・アマル≫
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