「マルセラ様――!
どこにいるのですか?!」
低声(こごえ)で懸命に呼びかけながら、辺り中を探し回るロレンソや部下たちが、幾つか目の分厚い鉄扉を開いた時だった。
途端、見覚えのある白球の群れが、開け放ったドア奥から猛然と飛び出してきた。
(あっ、これはっ!!)
と意識が走った瞬間には、既に時遅し。
白球は、ドアノブを握った姿で固まったロレンソたちの顔や全身にブチ当たってきて、見事なほど派手に炸裂した。
「――!!!」
それは、まぎれもなく、自分たちインカ軍が敵の目つぶしのために利用する、あのスパイス弾だった。
破裂した鶏卵の殻の中から、大量の小麦粉や唐辛子、胡椒が飛び出し、ロレンソたちの目や口内に飛び込んで、全身を白や赤に染め上げた。
「くぁ…っ……!」
不意打ちのスパイス弾を大量に喰らって、失神しかけたロレンソや部下たちの耳に、部屋の奥からマルセラの仰天した声が響いてきた。
「ええ?!
やだ、まさか、ロレンソ殿?!」
「マルセラ…殿……!
こ、ここに、身を隠して…いたのですか…ゴホッ!!」
胡椒や唐辛子を深々と吸い込んで激しく咳き込みながらも、安堵と歓喜の声を上げたロレンソの傍に、マルセラが素っ飛んできた。
彼女は、目の前でスパイスにむせているロレンソたちと、自分の手の中にある白球とを交互に見比べて、凛と澄んだ瞳を大きく揺らしている。
「ついに敵に見つかったかと思ったの!
それで、みんなで、このスパイス弾を投げて……。
そしたら、まさか、ロレンソ殿だなんて!
ああ、しっかりして!!」
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≪アンドレス≫(インカ軍)
トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。
若くして剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。
スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。
ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。
≪ロレンソ≫(インカ軍)
アンドレスが学生時代を過ごしたクスコ神学校時代の朋友。生粋のインカ族。
反乱幕開けと共に、インカ軍に参戦した。
アンドレスに比して大人びた風貌と冷静な性格を有し、公私に渡ってアンドレスを助けてきた。
≪マルセラ≫(インカ軍)
トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官である重臣ビルカパサの姪。
アンドレスやロレンソと同年代の年若い女性だが、青年のように闊達で勇敢な武人。
女性ながらもインカ軍をまとめる連隊長の一人で、ロレンソの恋人でもある。
砦の敵中に囚われ捕虜の身となっていたが、脱出をはかった。
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