カテゴリ:バレエ(海外バレエ団)
マリインスキーバレエ
「ロパートキナのすべて」 東京文化会館 大ホール 開演 18:30 ロパートキナの踊りをライブで観るのは、今回が初めてです。 想像どおりに…いいえ、想像以上、期待した以上に素晴らしかったです。 これほどまでに繊細さと、慎ましやかな気品に溢れる踊りを私はこれまでに観たことがありません。浮遊感…ともちょっと違うのですが、ぴんと張られた蜘蛛の糸の上で軽やかにステップを踏むような踊り。あるいは絹糸で綴られた五線譜の上を踊る音符のよう。(観ながらふと、吉田都さんも同じタイプかしら…と思いました) 彼女が、ロシアバレエの至宝とまで崇められることも納得できます。繊細、崇高、詩的、端正…褒める言葉がいくつあっても足りないぐらい。 ●「パキータ」グラン・パ 音楽:レオン・ミンクス/振付:マリウス・プティパ パキータ ウリヤーナ・ロパートキナ ルシアン ダニーラ・コルスンツェフ ソリスト エカテリーナ・オスモールキナ/スヴェトラーナ・イワーノワ ダリア・パヴレンコ/ヴィクトリア・テリョーシキナ マリインスキーの「パキータ」は、以前新国立劇場で観た(ヴィシニョーワ×コールプ)のと、ほぼ同じ印象。それもそのはず、新国版はマリインスキー版に準じているそうなので。パリオペのパキータも、もちろん同じ(に感じた)部分も多くあるけれど、ラコットによる復元版(ある意味ラコット版)だったのね。 冒頭で(アントレ)、4人組、2人組のバレリーナが次々と登場。皆、べっびんさんだわ~(笑)。「マリインスキー」という色眼鏡というか先入観で観ているせいもあるけれど、匂い立つような気品に溢れていましたわ。ザハロワは、やっぱりマリインスキーのお姫様が似合う気がします。 コール・ドは、舞台装置(豪華!)に同系の抑えめのオレンジの衣裳がとても上品。ソリストの衣裳は、朝顔を思わせるような、赤紫や群青色、深めのエメラルドグリーンなど、主張する色彩がとても印象的でした。2番目のソリストが、バランスを崩すミスがあって惜しかったけれど、主役も踊る面々ばかりで見ごたえがありました。中でも、最後に踊ったテリョーシキナは…噂には聞いていましたが、凄いですね。エレガントなのに、強靭!パワフル~。下手側で観ていたのですが、上手奥からこちらに向かってグラン・ジュテで飛んでくる、振り上げ脚の高いこと。当然、ブラボーも出ました。 ロパートキナは、純白の衣裳で登場。 おぉ~。貴族の娘にまさにぴったりの、輝くばかりの気品。控えめでありながら、決めどころは「きちっ」と決め、かといって正確に振りを追っているのではなく、音楽と振りがぴったり合っている。素晴らしい。合わせているのではなくて、合っちゃってる(笑)。ロパートキナの身体を借りて、音楽が奏でられているような錯覚すらおこしそうでした。 ヴィシニョーワ、ザハロワともにシェネが高速で驚いたのですが、ロパートキナも…速かったです。マリインスキーのプリンシパルは、皆そうなのかしら?優雅に超絶技巧を決められると、はは~ッとひれ伏したくなりますね。 さすがですね、マリインスキー。 コルスンツェフも、踊り、サポートともに非常に安定していて、好印象でした。 ●「ライモンダ」第三幕 音楽:アレクサンドル・グラズーノフ/振付:マリウス・プティパ/改訂振付:コンスタンチン・セルゲーエフ ライモンダ ウリヤーナ・ロパートキナ ジャン・ド・ブリエンヌ エフゲニー・イワンチェンコ 貫禄のライモンダ様でした。ジャン役のイワンチェンコの存在が弱かったせいもありますね…とても十字軍として遠征して、帰還してすぐに恋敵を斬り捨てるような侠気(?)は、感じられなかったわ。まぁ、ガラ公演だからそこまで求めてはいけないのかもしれません。 キャラクターダンス(ハンガリー)では、昨年のABTでヘススが踊っていたな~と思い出しました。マリインスキーの方が”ぴしっ!”とメリハリがあり、何倍も良かったです。ヘススごめん。 ヴァリエーションのソリストのイリーナ・ゴールプは、容姿も可愛らしく、華を感じる存在ではあったけれど、踊りがパキパキして元気が良過ぎる感じがして、ちょっと雑な印象でした。残念。 会場のお客さんが息を止めていたのでは?というぐらい、「シーーーーーーーン」と微動だにしない静寂の中で、ロパートキナの極上のソロを堪能しました。ロシア式?に、手を「ぱしっ」と打ち鳴らさないバージョンでした。(あれ?この前の新国立劇場「ライモンダ」※感想upしていません では、ザハロワは盛大に打っていたわ)終わった途端に割れんばかりの拍手。瞬きも呼吸も忘れるほど素晴らしかったということでしょうか。 ●”ジュエルズ”より「ダイヤモンド」 音楽 :ピョートル・I・チャイコフスキー/振付:ジョージ・バランシン ウリヤーナ・ロパートキナ ダニーラ・コルスンツェフ 今回のガラ公演は、本場マリインスキー劇場からセットを持ち込んでいるため、一部抜粋でも全幕を鑑賞しているような満足感に浸れます。 「ダイヤモンド」では、深い青とダイヤモンドの煌めきの…あまりの美しさに、ため息がもれました。冬のロシア(行ったことも見たこともないけれど)の凍てつく寒さ、澄み切った空気、雪原の中の神秘的な湖の碧(実際は凍っている?)を想像させます。世界バレエフェスティバルBプロの時(ヴィシニョーワ×マラーホフ)と同様に、この作品は、バランシンの故国への想いに溢れた作品なのだと思いました。 マリインスキーの「ダイヤモンド」は、やはり素晴らしかったです。個人的な思い込み覚悟で言わせてもらえば、ロシア人の音楽にロシア人が振り付けた作品は、ロシア人(中心のバレエ団)が踊ると最高だと思いますね~。 全編を通して硬質でクールな印象なのに、温かい”思慕”や”哀愁”を感じさせました。 ロパートキナとコルスンツェフはもちろん、他のダンサー達もテクニック的には、申しぶんありません。満足です。 そういえば、ロパートキナの衣裳は、3作品全てが白のクラシック・チュチュでした。 次に見る予定の「白鳥の湖」も白(オディールは黒だけれど)!ロパートキナ=「白」と刷り込まれてしまいそうです。でも、透明感と気高い雰囲気を持つ彼女には、白が一番似合う気がします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.12.07 09:43:31
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