しょうゆの作り方=醤油造りの現場から
昨日、川越の散歩しました。「蔵の街」川越をお散歩…なんと38℃ →8/26ブログそのうち、最も印象に残ったのは松本醤油商店の工場見学です。ここは、天保元年(1831)年に作られた蔵の中で手作りの醤油が作られています。1893年の川越大火を免れて、長い歴史の中、昔ながらの醤油「はつかり醤油」を製造、販売しています。150mL450円でとても高いのですが、2度醸造・熟成に2年(通常1年)かけてとてもまろやか。工場見学で聞いた話と、松山健一朗「しょうゆづくりの歩みと麹菌の関わり」,生物工学,92,2(2014)を合わせて解説します。【醤油の作り方】①醤油の原料 醤油の原料は大豆と小麦。大豆は蒸して、小麦は炒ってて引き割ったもの同量混ぜたものだそうです。②仕込み これに麹菌を混ぜて育てたもの(30℃、3日)を塩水に混ぜ樽に仕込んで「もろみ」を作り1年寝かせます。仕込みは冬、春から夏にかけて発酵させ、秋から冬に熟成させます。③しぼる 普通の醤油は1年で「もろみ」を風呂敷に包み、何枚も重ねて絞ります。こうしてできた醤油は加熱(沸騰させない温度で)殺菌して、瓶詰めし出荷です。松本醤油では、「再仕込み」するのだそうです。②の仕込みをもう一度。塩水の代わりに③で絞った醤油を加えます。さらに1年、醸造・熟成をするのだそうです。こうしてできた醤油は松本醤油の主力で、他社との差別化をはかっています。④しぼりかすは? この作り方は、日本酒と似ています。日本酒ではしぼりかすは「酒粕」です。醤油では、しょっぱいので使われず捨てる会社がほとんどだそうです。この会社は、牧場と契約して牛に食べさせているそうです。【麹菌・酵母菌の役割】以下、文献から上の写真はfcg-r.co.jpから転載しました。①麹菌の役割:グルタミン酸を作る 醤油の旨味は大豆のたんぱく質を分解して、アミノ酸やペプチドです。特に、うまみの元であるグルタミン酸をたくさん作って欲しい。醤油に使われる麹菌はタンパク分解酵素、ペプチド分解酵素、グルタミン酸合成酵素をたくさん作ることができる菌株が昔から選ばれています。酒造りでも麹菌は必要だが、しょうゆ麹菌と酒造りのための麹菌は違う種類です。②麹菌の役割:原料の多糖分解で麦芽糖を作る 酒麹でも、しょうゆ麹でも、でんぷんなどの多糖類を分解して麦芽糖を作ります。③酵母菌の役割 麦芽糖は、蔵の中に住む酵母菌により、乳酸発酵、アルコール発酵を起こして有機酸、香気成分、アルコールなど醤油の風味成分を作り出します。蔵のなかの古い柱には酵母や麹菌など住み着いているとのこと、江戸時代からずーっと生きているわけですね。ところで、「蔵人は納豆を食べてはいけない」んだそうです。納豆菌がもろみに混じると、納豆くさい醤油ができるそうで、目に見えないび生物の扱いは大変です。同時に、発酵の面白さや深さを学びました。