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○なぜ赤松農相の4月30日~5月8日の外遊は中止すべきだったのか?
自民党・公明党が赤松農相の不信任案を提出しようとしている。 これに対し赤松農相は「誠心誠意、大臣としての職務を全うしていこうと思う」と、辞任を否定している。 だが、宮崎での口蹄疫災害を知りながら外遊に出かけ、被害拡大の報告を受けながら外遊から戻らなかった農水大臣に存在意義があるか? 甚だ疑問である。 今回の口蹄疫に関しては ・前回の口蹄疫より確認が遅れたこと ・前回のウイルスより感染力が強いこと ・前回よりも発生場所が密集していたこと などを理由に、赤松農相が日本にいても 「私一人いなかったからといって、いささかも支障があったとは理解しておりません」 と感染拡大は防ぎようがなかった、と考えるむきもあろう。 が、この赤松農相の「私一人いなかったからといって」という認識には大臣・・・組織トップ、国に責任を持つ者として、そもそもの大間違いがある。 それは 「大臣は時の政権が党内人事に使うポストで、組織トップとしての資質は求められていない(要するにお飾り)」という考え方だ。 これは、官僚の天下りと同じく、組織を(国家を)良くするための人事という概念がすっぽり抜けている。 だから、後述するように、憎悪すら感じる「無能」に国民が振り回される事態になる。 ○なぜ、農水大臣は「現場に」いる必要があるのか? では、なぜ赤松農相の外遊は撤回するべきだったのだろうか? 突き詰めて言えば 「スピード」のためである。当然ながら、対策スピードが遅ければ、感染対策も、救援も遅れる。 特に今回は猛烈な感染力を持つ口蹄疫ウイルスが相手である。 口蹄疫対策の決め手は 感染スピードvs意志決定スピード(=対策スピード)だ。これは口蹄疫に限らない。 あらゆる有事・災害時にいえることだ。 ここでいう「スピード」をもう少し正確に言えば 「合理性のある意志決定スピード」だ。野球で言えば150km/hの暴投はいらない。 145km/hのストライクが求められている。 現状把握、意志疎通、なにより口蹄疫対策への集中。。。 これが日本よりキューバにいた方が正確で速いのなら外遊してもよい。 だが、FTAに出席している最中に口蹄疫対策を考えることができるか? 宮崎に行かずして、現地の状況を正確に把握できるか? 日本に居ずして、上(首相・閣僚)や下(農水省・宮崎県)との意志疎通ができるか? すでに、日本国民が震撼しているよう、口蹄疫ウイルスは恐るべき感染力を持つ。 「感染スピード vs 意志決定スピード」の戦いにおいて 赤松農相の「遅れ」は確実に”起こらずに済んだはずの被害”を招いた。 口蹄疫による殺処分の推移(4/20-5/24) 合計頭数145,358頭(5/24) ![]() 引用元:gapadeupa:【口蹄疫】グラフ・高鍋農高等7施設で確認、計2市5町で200例、殺処分対象14万5千頭超(5月24日現在:更新) 赤松農相は感染爆発から逃げるような30日のタイミングで外遊した ゆえに今回の口蹄疫災害を、戦後最大の農業人災として「赤松口蹄疫」と称するのだ。 ![]() 戦後最大の農業人災はこの素人農相の無知が招いた・・・ ○「スピード」だけではない!赤松農相が外遊を中止すべき理由 事件の最中、現場、日本あるいは宮崎に最高責任者(トップ)である農水大臣がいなかったのはどういう意味か? 現地、宮崎には家畜伝染病予防法上の主たる責任者である知事・・・東国原知事がいた。 まず、4月20日に口蹄疫が確認された。 東国原知事は家畜伝染病予防法上、必要な措置とそれ以上の措置、さらには日本畜産の砦・宮崎を守るための措置を講じた。 宮崎の農家、獣医師、役所や団体の職員は、知事の指揮下で、地獄絵図のごとき現場で奮闘した。 しかし、赤松農相が外遊に出発した4月30日の時点で、事態はすでに宮崎県の問題ではなく「国家緊急事態」だったのだ。 ※6/15追記:菅首相が「国家的危機」とコメントしたのは6/13。あまりにも遅すぎる現状把握だ。 被害の大きさ、食糧自給や国民生活に与える影響の大きさ、それを挽回するための膨大な費用・・・ 赤松農相は出発前の4月28日に開かれた農水省の小委員会で 『感染確認後の迅速な殺処分等により、既に6例目の農場まで防疫措置が終了しており、迅速かつ適切な防疫措置が行われている』 『豚での感染(1戸)が初めて確認されたが、感染拡大につながる豚の出荷は認められなかった』 ため、外遊しても大丈夫と判断したと答弁している。 なんという無知な農相だ! 防疫措置や出荷制限をすることは「当たり前」のことで、「口蹄疫終息」とはまったく関係ない。 いや、6例目が発見されたということは感染拡大中で、収まる気配がないということである。 さらに(感染しやすい)豚での感染が確認されたということは、パンデミックが始まったということである。 多少でも口蹄疫ウイルスの恐ろしさに危機感がある・・・農業に関心がある大臣なら、「これなら大丈夫」ではなく「これは大変だ!」という結論になるはずだ。 4月25日:4頭目の感染が確認。殺処分の対象は戦後最悪の1000頭を突破。 4月27日:東国原宮崎県知事、赤松広隆農水相や谷垣禎一自民党総裁に支援を要請。 翌日、自民党に口蹄疫対策本部が設置される。 4月28日:国内初の「豚」への口蹄疫感染疑いを確認。 約70km離れたえびの市からも感染が疑われる牛を確認。 4月29日:山田農水副大臣が東国原知事と意見交換。 防疫予算を要求するも「検討」のみの回答。 4月30日:自民党、赤松農相と鳩山首相に会談要求。 一旦応じると回答しつつドタキャンして赤松農相はメキシコに発つ。 このとおり、赤松農相は口蹄疫被害拡大の最中に(というかヤマ場で)外遊を行っていた。 赤松農相が「農水幹部に意図的に情報を隠された」という意見もあるが、少なくとも感染の増加・拡大を報告されており、東国原知事の支援要請も受けている。 これを「緊急事態」と認識しなかった落ち度はまず100%赤松農相にある。 緊急事態と認識しなかったのは、赤松農相の無能と無知に原因を求められるだろう。 だとすれば、赤松農相を首輪をしてでも日本に残し、農水省に缶詰にして、畜産や口蹄疫の勉強をさせるべきだった。 赤松農相に多少まともな認識があれば、その後の意志決定スピードの速さや、対策の妥当性が増したことは間違いない。 現行法や現行マニュアルで対応できないことも現場で露呈していた。 必要なモノやヒトの手配も国家レベルで調達しなければ対応不可能だった。 たとえば、口蹄疫対策の切り札であるスーパー消毒薬「ビルコン(独バイエル社)」の調達。 同じく口蹄疫発生国である中国や韓国、EU諸国では国家レベルで取り組んでいる。 つまり、赤松農相がすべきだった外交は、イギリスとドイツに飛んで、ビルコンを調達することだった。 また、現行法とそれを基にした対策マニュアルが実情に合っていないという指摘は、かなり早い段階に現場から上がっていた。 それならばBSE発生時のように特別措置法を国会で緊急成立することも現政府にはできた。 これには対立する自民党も協力しただろう。 同時に農水省のマニュアル改訂を指示することもできた。 法律やマニュアル作りは国会や官庁の仕事だ。 これだけの「不作為」をしながら、赤松農相は「私に責任はない」と言い続けている。 ○赤松農相外遊で「政治主導はムリです」と宣言することになった現政権 緊急事態と当然認識すべき事態の最中に日本に最高責任者がいなかったことは、日本政府、少なくとも現政権がいかに無能かを白日の下に晒した。 赤松農相に代わった福島瑞穂・臨時大臣代行、山田農水副大臣ともに「無策」であった。 (この緊急事態にど素人を臨時大臣にしていることからも、現政権の危機管理意識がわかる) 政府が口蹄疫対策本部を設置したのは感染確認から27日後の5月17日だった。 (野党の自民党は独自に4月27日の時点で対策本部を設置した) 口蹄疫ウイルスが1997年に台湾で招いた被害は4000億円。 2001年に英国で招いた被害はなんと3兆5000億円だ。 畜産輸出国でなくとも、口蹄疫ウイルス=千億~兆単位の被害をもたらす国家的危機というのは「常識」。 それを 「自治体でなんとかすること」 「現行法どおりやっていれば大丈夫」 などと微塵でも考えていたとすれば、恐るべき愚政者と言わざるを得ない。 民主党ら現政権が掲げる「脱・官僚依存」と「政治主導」 多くの国民が官僚(公務員)に対して「優遇されすぎ」「保身しか考えていない」と反感を持っている中で、相対的に官僚の力を弱める公約は感情的にも受け入れやすかった。 だが、"脱・官僚依存"が国民の支持を得たからと言って"政治主導"が支持されたわけではない。 もちろん脱・官僚依存という概念自体は悪くない。 悪いのは、少なくとも現政権には政治主導にするだけの能力はおろか準備すらなかったことだ。 もっと言えば、国家と国民生活を良くするための政治主導ではなかったことだ。 単に彼ら政治家の影響力を強めたかっただけにすぎないとすら思えてくる。 そして、今回、赤松農相外遊は(普天間問題とセットで)官僚から主導権を取り戻すべき為政者が無策・無知・無能であるということを、自らはっきり宣言した結果となった。 これにより、政治家みずからが有能になって、有能な官僚をうまく活用するという理想型は遠のいた。 つまり、赤松農相は口蹄疫問題というミクロな意味からも、いびつな官僚変革というマクロな意味からも、決して外遊すべきではなかったのだ。 ![]() がんばれ宮崎畜産! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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