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2007.06.03
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カテゴリ: *榎田尤利さん
榎田尤利さんの『華の闇』を読みました。
榎田さん初の遊郭ものは、堂々と王道でした。

その不遇に同情した事から始まった交流は極短期間で絶ち切れ、再会はよりによって吉原の妓楼でした。
男は、男でありながら娼妓となっている少年の姿に驚愕し、そして激しく詰め寄ってしまいます。少年も、逢いたくはなかった人との思い掛けない再会に、頑なになってしまいます。
男は、吉原唯一の男遊女の水揚げを申し出、一週間掛けて本格的な花魁となるべく仕込みます。
それは初め、お互いに意地の張り合いだったのですが、やがて男は自分の本心に気付き、少年も自分の想いを押さえ込めず、そして二人は真実の一夜を交わすのでした。
男は少年に落籍を申し出、しかし少年はきっぱり断りました。
少年は、吉原という街に生まれ、かつて吉原随一と謳われた名妓の子として育った者だからこそ、意地を張り通したかったのです…

母親の死後父方に引き取られたものの苦難を強いられ、挙句身売りされ苦界に沈んだものの、かつて仄かな思慕を寄せた者と再会し、そして結ばれる…という、まさに王道の物語です。
初花の如き振袖新造姿から、花魁として開花し、クライマックスの絢爛たる花魁道中まで、娼妓としての華々しい姿を表し、その前後には哀れで健気な少年と才色兼備な秘書の姿を配して、一人の人間の変容をたっぷりと魅せ付けてくれます。
さすが榎田さん!と言うべきか、見事な王道っぷりです。
言ってしまえば、新鮮さとか意外さは無く、もうその最初からゴールは判っているわけで、だからこそ技量が顕わになってしまう王道を、あえて承知の上でまっしぐらやってのけたという作品です。
榎田さんだからこそ出来る事で、普通なら避ける道です。

実に榎田さんらしく、主人公たちは純粋で懸命で、そして彼らの周囲は人生経験豊富でわけ知りです。共通して根に一途さを持ち、心優しいものがあります。
端役としてヒールは登場しますが、印象に残る人々の気持ちの良さが全体を綺麗らしくし、遊郭ものとしてはあっさりとした味わいかと思います。
また、この物語のキーワードが‘赦す’という事もあって、恨み嫉みや苦しみ哀しみが黒々と蜷局を巻くような物語にはなっていません。
そのあたりは、読み手によっては物足りないかとは思いますが、やはりそれも榎田さんらしさだと言えるでしょう…東京もんらしいなぁ…と。

脇としては、やはり曲者の絵師がなかなか面白いのですが、私としては、通で粋でその実一途だった子爵様がとても魅力的でした。
子爵の嫉妬が実は発端であり、成就の切欠もまた子爵であったわけですが、花魁の膝枕でしみじみと述懐される場面には味わい深いものがあります。
「遠慮せず、僕の子として生まれてくればいい」という言葉には、実に多くの想いが込められていて、だからこそ少年の母である娼妓の心情を様々想像してしまいました。
苦界に身を置きながら自らを貫き、‘赦す’という言葉に諦観を込めなかった娼妓の生き様の、なんて見事な事。
だから彼女の息子も諦める事なく、幸福を掴む事が出来たのです。

最後の、雪の中の逢瀬は、大変に美しい場面です。
凍える寒さの中で告げられる懸命な告白の場面に、これもまた榎田さんらしいというべきか、彼らたちにとってもまるで肩透かしにあったような‘間’が用意されています。
これよって、彼らは矜持を解き素となるわけで、実に絶妙な‘間’です。
何となくこれに、ちょっと含羞も感じてしまったのですけど…

さて、この『華の闇』は、大洋図書さん的には‘遊廓絵巻競演第二弾’だったそうです。
第一弾は、橘紅緒さんの『妓楼の戀水』だったそうで…いつの間に!?と思って改めて見たところ、ちゃんと帯にそうありました…‘第一弾’とは書いてなかったけど。
第三弾は秋の予定だそうで、何方のご登場なんでしょう?
ここまで来たら、尻込みしないで愉しみにしてみましょうか…さくら

 『華の闇』 2007年5月 SAY NOVELS
  榎田 尤利 * 蓮川 愛





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Last updated  2007.06.03 15:26:46
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