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2016.11.16
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若手ピアニストの登竜門として注目されるコンクールに集う、
真に音楽を愛する人々の物語。
二段組500頁超というボリュームを嬉々として読み耽らせ、
脳内は絶えず音色と色彩と煌めきに溢れ、そして読後に包まれる爽快な心地良さ…
実に、見事な作品と出逢えた。

事前に催されたオーディションの審査員は、優れた耳と感性と、
そして豊富な経験と知識(様々な意味で)を備えた、
そう容易くはないだろう曲者揃いだと想像できる。
そんな審査員たちが、蜂の巣を突いたように騒然となる発端から、
物語は小気味よく動き出す。


その、大人たちを騒然とさせた一人の少年は、常に静かであり、
あくまでも純粋で素直で、でも、実は些か破天荒でもある。
そして音楽に対する真剣な思いは、ひたすら一途。
まだ16歳の少年は、その華奢な身の内に、ダイナミックな世界を抱き、
奏でる音色は縦横に迸り、聴く者を唖然とさせる…

コンクールに集う若者たちには、それぞれの音楽があり、それぞれの物語がある。
皆、選ばれて集っただけあって、大変優秀なピアニスト揃い。
一次審査に始まり三次審査まで、厳しくふるいに掛けられ、最後まで残るのは、
天与の才があり、怠らず奢らず、音楽を愛し献身する者たち…
つまりこの物語は、真の天才である若者たちの、瑞々しい群像劇となっている。

真の天才たちは、純粋で、聡明で、無邪気。
十分に己の才能を承知しており、更なる研鑽に心を砕く。
物語の主軸を担う彼らは、実に魅力的な若者揃いで、清々しい。

彼らと、そう引けを取らない才能を持ちながら、自滅する者もいる。
才能に自信を持ち、面と向かって対抗してくる、灰汁の強い存在も登場する。
高みを目指す事の苛烈さ、真の才能というものの非情さが表されるが、
そこからは、馥郁たる豊かなものは聴こえてこない。
だから、真の天才たちの在る場所へは、とうてい届かない。

でも、少し何かが不足していた者の中にも、確かなものを掴み取れた者がいる。
音楽に対して、懸命に差し伸べた心は、ちゃんと届いた。
個人的にも、贔屓にしていた彼が報われ、本当に嬉しくてならなかった。
才能や技巧ばかりではない、音楽に寄せる真摯な心あってこその、
彼の弾くショパンのピアノ協奏曲第1番、是非聴いてみたかった…


この本の頁を開いて、タイトルの次にある「目次」には、音楽用語であったり、
曲の題名であったり、そんな音楽に関係した言葉が並んでいる。
それを読みながら、ちょうどこれは、オーケストラの音合わせだと思った。
次の頁には、コンクールの第一次~第三次、そして本選の課題曲が並ぶ。
そしてその次の頁に、主要人物4人それぞれの、第一次~本選までの曲目が
列記されていて、物語が進むにつれ、この頁は何度となく振り返る事になった。

物語の深まりに合わせ、記憶にある曲が脳内に溢れた。
日ごろ馴染のない曲や敬遠していた曲は、検索をして改めて聴いてみた。
文章を追いながら聴いた曲は、これまでとは違う聴こえ方がして、
ましてや、予てから好きだった曲は、表情を豊かに変化させた。
豊かに音楽を表現する文章に煽られるように、読みながら興奮していた。
それはもう、愉しくてならなかった…


この本のカバーの袖に、「推薦状」という一文がある。
これが、この作品の、まさに号砲一発というシロモノなのだが、物語を読み終え
改めてこの一文を読むと、様々な感動と感慨が湧き立ってくる。
この一文を遺すしか術の無かった「彼」は、そこに祈りを込めた。

「彼」の「ギフト」は、託された。
託された者たちは、おそらく「ギフト」の奔放ぶりに振り回されるのだろう…
さて、「ギフト」を更に自由に羽ばたかせる事が出来るかどうか、
「彼」は天から見ているだろう…きっと面白がって…
同時に、自分こそが共に在りたかった…と。





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最終更新日  2016.11.16 14:53:53
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