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カテゴリ:坂田 博昭
水曜日の担当は、坂田博昭です。
今回は、まず先週の名古屋競馬場の風景から。 11月15日水曜日のJRA交流に、この人が来ていました。 JRAの今村聖奈騎手 デビュー2年目 19歳 昨年9月にこの場所で初めて行き会って話を聞いてから、もう1年以上が経っていました。 当時話した内容はこちら 今回も、レースの前にたくさん話をしてくれました。 「考えすぎ……ですかね(苦笑)」 こんな言葉から、取材は始まりました。 彼女の、様々なことを考えながら乗る、という姿勢に共感があっただけに、少々意外な言葉でした。 「様々なことを経験して、馬のこととか、相手の騎手のこととかレースのこととかが少しずつわかってきてしまって……それで却って考えすぎになっているような気がします。」 デビュー当初のように、連戦勝つ、みたいなことはなくなりました。 実際、いま彼女が乗っている馬の多くが、人気の薄い馬。 当然勝てないことも更に多くなりますし、勝てばそのたびに「久しぶり」と報じられてしまうのも、少々気の毒な感じがします。JRAにいたら、それが普通だから。競馬はそもそも、勝たない人の方が圧倒的に多いスポーツだから。 「減量が3kgになって、力がある馬が回ってきづらくなってきていることもあると思います。」 この秋は、新潟には行ったものの福島には行かず、11月に入ってからは京都で3週乗ってきました。 「主場(京都・阪神)では、トップの騎手がいる中で、力のある馬に乗るのは難しいことはわかっています。それでも得るものは、第3場(秋なら福島や新潟)で乗るよりもはるかに多いと思っています。」 「例えば、隊列、ですね。」 いま強く意識していることだからか、こちらから言葉を求める前に、この「隊列」の話が出ました。 「新潟とか福島では、スタートしてから隊列が決まるのが明らかに遅いです。ごちゃついたりすることもありますし。これが阪神や京都でトップの騎手が揃ったレースだと、スタートしてすぐに2頭3頭3頭…といった形で隊列が決まっていく。その中で自分の欲しい位置をとるのは、本当に難しいことなんです。」 私自身レースを見る立場で、位置取りそのものは意識していても、隊列の決まり方、というのはそこまで深く意識していませんでした。 福島や新潟など、いわゆる「ローカル場」に行ってたくさん乗る、という考え方もあるかとは思います。実際、彼女と同じような立場の若手の騎手が、そうして勝ち鞍をのばしている現実もあります。 「同期や仲間が他場でたくさん乗っていて、次々勝っていくところを見るのは面白くないですよ(笑)。勝利が決まって、ゴールする前にテレビ消したくなることもよくあります(更笑)。」 たぶんこれが「彼女らしい」笑顔なんだろうな、といういい表情で、更にこんなふうに続けます。 「一緒に頑張ってきて、お互いに苦しいときにも支え合いながらやってきている仲間なので、その活躍している姿を力にしなければ、と思います。」 「1ヶ月ぐらい前から、ようやくまた馬に乗ることが楽しいと思えるようになって来ました。結局…馬に乗ることが『仕事』になりすぎていたのかも知れませんね。」 勝てていないという結果に対してだけでなく、仕事への向き合い方やその他たくさんのことを思い、そしてもしかしたら時に悩みながら歩んでいる彼女の心情が、垣間見えた気がしました。 「楽しく乗ること。そして、勝つためには力の足りないと思われている馬であっても、1つでも上の着順に走らせてあげること。その積み重ねしかないと思っています。」 いま、彼女らしく思い考え、そして彼女の思う道を進んでいった先に、何が見えるのか。そして私たちに何を見せてくれるのか。とても楽しみになる話でした。 手前の人影は、竹下太調教師 管理馬のレース振りを、いつもこんな風にコース際で見守っています いま、名古屋に「新顔」が通い詰めております。 笠松の東川慎騎手 4年目 22歳 昨年が57勝 今年はすでに51勝 キャリアハイの達成も現実的になって来ました。 ……っていうか、正直驚いたんですよね。彼がいて。 名古屋に乗りに来ることが、これまで殆どありませんでしたから。 「これからは、(名古屋の)毎開催日乗せてもらえるように、頑張りますよ! いま、馬に乗るのがめっちゃ楽しいんです!!」 改めて、いまレースの中で意識していることを聞いてみました。 「基本、どの馬もハナに行くつもりで乗っていますよ。」 ほう…… 「どの馬も、基本的には砂を被らないで走るのが、一番気持ちが出て気分よく走れるはずだと思うんです。スタートして、出鞭を入れる。いっぺん気持ちを入れてみる。それで行ければ良いですし、行けなければまたそこからレースをしていく。予めどう乗るか考えると言うよりは、スタートしてからの感覚でレースをしている感じです。」 なるほど、これもひとつの考え方。感じ方。 「ただ……馬群の競馬は、自分はうまくないかも、という気持ちもあります。苦手意識と言えばそうですね。」 「自分はまだ、考えて乗る、ということが出来てないですね。感覚で乗っているようではまだまだ。」 王者・岡部誠騎手と話をしたときに、「岡部さんはすごい」と感じたそうです。それは恐らく、その「考えて乗る」ということにおいて特に感じたのかも知れません。 これからその部分を少しずつ身につけてくるのか、それとも「感性の人」でプレーしていくのか。外野にいる私からしたら……それはどちらもありなのかなと。スポーツアスリートとしては。 笠松でも頑張っています。 名古屋でも、これから目立ってくるはず。注目して見てください。 冬場の名古屋は、デイレースの日であっても、薄暮時間帯にレースを行うことがあります。レースの時刻はその都度お確かめくださいね。 この写真のような夕暮れどきを過ぎた後、まだ半分ぐらいレース残ってます(汗)。 ここからは、重賞レースの風景 まずは、11月16日木曜日の名古屋競馬場 古馬1900m戦の全国地方交流競走・東海菊花賞(SP1)が行われました。 向正面からスタートしてコースを1周半するレースの、最初の正面 驚いたのは、いつもなら後方で押っつけ通しになるブリーザフレスカ(外目3番手緑帽黄服)が、レース序盤に位置を取りに来たこと。馬も反応したということなのでしょうが……この動きが、他の馬の騎手にとっても意外だったみたい。 前はリコーヴィクターがハナに立ち、アンタンスルフレは無理せず番手を確保。 2周目3コーナーの攻防は見応えがありました。 先頭に立ったアンタンスルフレに、外からアラジンバローズが攻めかけて行ったシーン。アンタンスルフレがそれを受け止め、再度リードを取り始めたところで勝負ありでした。 アンタンスルフレが、1馬身半リードを取って悠々とゴール! 前走、金沢の北國王冠から中10日での重賞連勝という快挙でした。 佐賀から参戦したヒストリーメイカーは、後方から追い上げて3着 石川慎将騎手は、手応えと残念さが相半ばするような感じで、こう話しました。 「元々、ロングスパートで行こうという作戦でしたが、この馬、どこから行き出してどのぐらい持つかが、レースごとに違って難しいです。今日は3~4角から動き出せたけれど、その分直線はすこしメリハリを欠いた感じの脚になってしまいました。」 アラジンバローズの下原理騎手も残念そうでした。 「(レース序盤で)ブリーザフレスカが来た時に、行かせずに前へ出て行っても良かったかな……。ただ、あのタイミングだと結構なペースになりそうだったし。勝ち馬は、金沢のレースを見たけれども、当時と同じような感じで行かれてしまって、捕まえられませんでした。こちらの馬自身は、地方競馬にも慣れてきていて、まだ良くなる余地がたくさんあります。」 丸野勝虎騎手(写真右端)の勝利騎手インタビューの模様は、名古屋競馬オフィシャルYoutube映像でご覧下さい。 角田輝也調教師(写真馬のすぐ左)の話 「前走を使って中10日で、馬体重はプラス10キロ。直前で追い切ることも出来たぐらいで、馬が本当に良かったです。自信を持って送り出せたし、負けたら仕方がないという気持ちでした。」 このあと、期間限定で南関東に転厩し、大井の金盃(1月24日 2600m)を目指すそうです。トライアルと本番の2戦を戦うとのこと。 「本物のステイヤーとしての成長を期して、『武者修行』という位置づけで、私が判断しました。春には、JRAの阪神大賞典への挑戦とか、オグリキャップ記念という目標になるレースもあります。阪神で頑張ることが出来れば、その先には天皇賞・春という目標も出来てきます。」 まだ5歳 「本物のステイヤー」としての成長を、見届けていきたいと強く感じました。 続きましては 昨日・11月21日火曜日の笠松競馬場 笠松の秋の大一番、笠松グランプリ(1400m)が行われました。 勝負所を迎えるより早く、エンジンがかかったルーチェドーロ ものの見事に「インまくり」 その時点で勢いが違いました。直線では抜け出して、後続を離す一方。 今回は、地元笠松の藤原幹生騎手の手綱で勝利。 馬は笠松グランプリ連覇達成! 「地元の騎手でなければ、このレース(イン掬ってまくる形)は出来なかった。それにしてもビックリした。スタートがうまくなくて、道中は追い通しになる馬が、あんなに早く行き出すとは。」 池田孝調教師はレースの直後、そんな風に振り返りました。 「休養先での乗り込みが足りなくて、そこからの時間も足りず帰厩してからの乗り込みも不足。追い切りも正直キレが物足りないと思っていました。次走は地元川崎で左回りになりますが、新設の神奈川記念(12月14日 1600m)に行くか、もしかしたらですが園田の兵庫ゴールドトロフィー……」 話しぶりとしては、神奈川記念の方、という感じでした。 ただ、この馬右回りでしか勝ってないですね(汗)。 春の名古屋でのレース振りも目を引くものがあっただけに、より強い相手との戦い振りも、改めて見てみたい気がします。 殊勲の藤原幹生騎手 「今日は前が止まらない馬場で、内も結構あいていたので内を回っていきました。難しい馬だとは聞いていたので、思い切り行けるところで行こうと仕掛けたところ、意外とと素直に動いてくれました。」 やはり、名手、ですよね。 ルーチェドーロが、あんなに凄い手応えで動いて行くところ、そんなにみたことないもの。 改めて、笠松にこの人あり、というところを見せてくれました。 今日は、園田でダートグレード競走の兵庫ジュニアグランプリ 名古屋からはミトノウォリアーが挑戦します。 私も園田に行って、その果敢なる挑戦の姿を見届けてきます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023年11月22日 07時59分17秒
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