|
カテゴリ:カテゴリ未分類
はったりをかましてみる。
はったり 大辞林 第二版 (三省堂)より 1 わずかなことを大げさに言ったり、ありもしない物事をあるように見せたりして他人を圧倒しようとすること。また、そういう言動。 「―をきかせる」「―を言う」「―屋」 2 おどして金品を強奪すること。 「喧嘩仕掛けて物取るを―というて/浄瑠璃・双蝶蝶」 日常診療で結構使い勝手があるのが「はったり」だ。英語で言えばブラフにあたるだろう。患者さんにもよるが、とりあえず誇大気味に話しておくと後々の診療がスムーズになることも多い。 もちろんはったりをきかせすぎて失敗することもあるだろう。しかし、患者さんの不安を取り除く最初の行為は「はったり」に違いない。 たとえば吐血による出血性ショックで運ばれてきた患者さんがいたとしよう。血圧も触診でsBP 40mmHgしかない。意識も朦朧としている。着衣も血まみれだ。それでも、こんな患者さんに対し最初にいう言葉は「○○さん、もうだいじょうぶですよ~、病院へ着きましたからね~」だ。 この言葉がおかしいことは誰だって分かる。あと10分もすれば心肺停止になる可能性があるのに何が「大丈夫」なのだろうかと疑問はつきない。しかしこのはったりこそが患者さんへの精一杯の励ましであることは想像に難くない。 (ちなみにうちのク-ルな外科医はこうした患者さんが運ばれてくると「もうダメだな」とあっさり言い切ってしまう。これまた一種のはったりなのかも知れない) 臨床の現場において、このはったりをきかすことができるか否かが初級者と中級者を分けているような気がする。手も動く、頭も働く……しかし患者さんを励ますまでには頭が回らない、そうした研修医を自分自身も経験したし、上級になってからも何人も見てきた。 外科医なら何も言わずに手だけ動けばいいのかも知れない。しかし内科はそうはいかない。ムンテラ(ムント・テラピーの略称らしいが)という言葉があるように口先がなんぼの世界だ。口八丁・手八丁という言葉は内科のための言葉ではないかとさえ思える。 もちろん、はったりだけで病気は治らない。どんなに励ましてみても目の前で起こっている現実はそう簡単に好転しない。しかし、はったりが必要な場面というのは少なからず確実に存在する。 はったりは「嘘」ではない。たしかに患者さんにしてみれば嘘であったと感じるかも知れないが、ベテランドクターははったりを嘘と感じさせないテクニックを持っている。 それは言葉では表現しがたく、現場の雰囲気でつかみ取っていくしかない。研修中の先生たちは是非、はったりをきかせたり、なだめたり、すかしたりしているドクターの言葉を色々と学んでおいた方がいい。ドクターの人柄が分かる貴重な瞬間だし、患者さんの満足度がどれくらいかも分かる重要な場面だからだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005.11.14 12:06:34
コメント(0) | コメントを書く |
|