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ある内科医の独り言

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2005.12.08
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学生が医者になって研修を始めるとき、そこには十人十色の研修がある。少なくとも僕が医者になった頃はそうだった。最近は厚生労働省により臨床研修制度が制度化されたこともあり、以前ほどのバラエティーはなくなってきているようだが……。

医者が自らの意志で働き出すとき、そのスタイルを決定しているのは初期研修であることは疑う余地がないだろう。最初は上司の働く姿を見よう見まねでこなしていた仕事も、年数がたてばまるでコピーされたかのような同じ動作にかわっていく。その頃には若干のアレンジが加わっているかもしれない。そしてまた同じように後輩へと研修が受け継がれていく。

技術というのは結局実体験してみなければわからない。教科書に書かれていることが決して正しいことばかりでないというのは働き出せばすぐにわかってくる。頭で理解せねばならないのは当然だが、それでもまず最初に動き出してみないと何もできない。

研修期間というのは見習いみたいなものだ。教科書片手にやってみてだめなら上司からのチェックが入り、修正する。その繰り返し。しかし若気の至りか働ける喜びか、自分でぶつかる壁がわからないからどんどん前へ進んでいける。だから頼もしい。

研修が義務化されて来年で3年目を迎えようとするが、研修は受ける研修医自身だけではなくそれを支えるスタッフドクターによるところも大きいと思う。

厚生労働省は立派なお題目を抱えて、各項目に対し研修目標が達成できたかどうかをチェックする一覧を作成している。医師として知っておかねばならない知識、できなければならない手技などが網羅されているが、それを実体験として教えてくれるのは患者さんやスタッフドクターら現場の人達だ。

先にも書いたように医師の診療スタイルは上司から学ぶところが大きい。「学ぶ」という言葉は、「マ(真)から出たマネブ(擬)の転」そして「マコト(誠)をナラフの義」から生じたとされるが現場ではとにかく上司を真似てみるしかない。

患者さんに研修医と思われないように胸を張って堂々と説明せねばならなかったり(内心はどんなにヒヤヒヤであったとしても)、手技に関してもお手本に沿う形で真似していかなければならなかったり、とにかく上司が手本なのだ。

だから上司は親身になって研修医を育てねばならない。後輩の育成に携わっていく上での人格と見識を備えていなければならない。しかしそんな基本的なことがなかなか理解されていない。まぁ、僕自身そんな人格や見識には乏しいのであまり大きなことはいえないのだけれども。

研修指定病院というのは一定の規模や設備などが審査の対象で、スタッフドクターの人格なんか項目にも入っていない。いいスタッフドクターは口コミでしか教えてもらえないものなのだ。

いい上司に巡り会えるかどうかは運みたいなものだ。いくら立派な上司でもウマが合わなかったりすれば何も教えてもらえないだろう。逆に頼りない上司でも盛り場での遊び方くらいなら教えてくれるかもしれない。それがきっかけで患者さんとの絆が深まる場合だってある。

研修というのは(たとえは悪いが)人馬一体。お互いのギアがかみ合ってこそのものだ。上司や患者さんとのギアをうまくかみ合わせていくことが上達への近道であることには違いない。様々な種類のギアを持っているかどうかでその後の医師としての人生は大きく変わるに違いない。

まず隗より始めよ、という。僕自身もそろそろ手本を示していかねばならないようだ。





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最終更新日  2005.12.08 09:25:40
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