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地球に優しく人に優しく、限りある資源を子どもたちに残そう

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February 12, 2007
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カテゴリ:地球に優しい
今日は怖い話を書きます。

今から数百年後の未来の話。

【緑の肌の子供】
 二人の若い夫婦の間に赤ちゃんが産まれた。
 元気な産声を上げ、体重も標準的な男の子だった。
 五体満足で健康そのものの赤ちゃんだったが、
 ただ、肌の色が緑色だった。

 緑色の肌の子供はその後、すくすくと成長した。
 彼は、心も優しく、頭も良く、病気もせず、
 肌の色を除けば、普通の人と何一つ変わらなかった。
 しかし、周りの子ども達からは緑色の肌のことをからかわれいじめられた。

 同じ頃、彼と同じ様な緑色の肌をした子供が世界中で何人か産まれた。
 医学的な調査が行われたが、肌の色以外は特別普通の人と変わりはなかった。
 けれども、見た目が普通の人と違うというだけで、彼らは疎外され、いじめられた。


 彼らが成長し、結婚適齢期になった時、一部の人達は、彼らに結婚を許すべきでは
 ないと主張した。「緑の遺伝子を子孫に残すなど、とんでもない」と。

 しかし、大半の人々は肌の色で差別すべきでないと、彼らの結婚を容認した。


 緑の肌の彼らと普通の肌の人間との間には緑色の肌の子供が5割の確率で産まれた。
 そうして、緑の肌の子供は世界中に徐々に増えていった。

 彼らはグリーンピープルと呼ばれた。


【二酸化炭素警報】
 そのころ、地球上の二酸化炭素濃度は2%を越えていた。
 20世紀の後半から二酸化炭素濃度の上昇が危惧され、
 二酸化炭素の排出防止が叫ばれていたが、
 結局人類はエネルギーを使う豊かな生活を捨てきれなかった。
 地球温暖化の影響で、南極の氷が溶け、界面が上昇したが、
 人々は北極や南極へ移住し、暮らしていた。

 気候の影響や二酸化炭素の排出量の増大で、
 局地的に二酸化炭素濃度が3%を越えることがあった。
 3%を越えると、人々は頭痛、めまい、吐き気などを催す。
 二酸化炭素濃度が3%を越えそうになると、「二酸化炭素警報」が発令された。
 20世紀後半の「光化学スモック警報」に似ている。
 人々は二酸化炭素除去装置を回して家にこもった。

 そんな、「二酸化炭素警報」が発令された日でもグリーンピープルは
 平気で外を歩き回ることができた。頭痛もめまいも吐き気もなかった。
 彼らの肌の緑色は葉緑素だった。
 彼らは二酸化炭素を体内に取り込んで、光合成により二酸化炭素を酸素に変えていた。
 だから、二酸化炭素濃度が高くても何の異常も起こさなかった。


【ドーム建設】
 その後、さらに二酸化炭素濃度は増大し、3%を越えた。
 こんな濃度の中では人類は生きていけない。そこで、先進諸国は巨費を投じて
 二酸化炭素除去装置を備え付けた巨大なドームを作り、そこで生活を始めた。
 ドーム内の空間は限られていたため、
 グリーンピープルはドーム内への立ち入りを禁止された。
 一方、発展途上国はドームを作る資金も技術もなかったため、国を維持するために
 グリーンピープルとの結婚を奨励した。

 そして、発展途上国を中心にグリーンピープルの人口はさらに増えた。

 グリーンピープルの数が増えると、グリーンピープル同士でカップルとなることもあった。
 グリーンのカップルからは、必ず緑の肌の子供が産まれた。


【ドームの生活】
 ドームの生活は不便だった。行動範囲が制限された上、21世紀に比べて格段に強烈な
 台風や雷、洪水が頻繁に起きるため、ドームが破損し、修理を余儀なくされた。
 ドームの破損で流入した二酸化炭素で命を落とす人もいた。
 自分の子供にはこんな不便はさせたくないと、グリーンピープルと結婚し、
 グリーンの子供作る親も多かった。

 そうして、ドームの中では普通の肌の人間はだんだん少なくなっていった。
 
 人間の数が少なくなると、コミュニティを維持できなくなるため、
 グリーンピープルもドームの中に入ることを許された。

 そして、ドームの中でもグリーンピープルの数は増えていった。

【終焉】
 何世代か後、普通の肌の人間がどんどん少なくなり、
 一人もいなくとドームは取り壊された。
 そうして、世界中でドームの数は減っていった。
 
 世界中でただ一つ残ったドームに、普通の肌の老夫婦が住んでいた。
 彼らには一人息子が居たが、息子はグリーンだった。

 ドーム内の二酸化炭素濃度管理はこの老人の仕事だった。
 二酸化炭素濃度管理を必要としているのはもはやこの二人を除いてはいなかった。

 ある日、ドームの片隅に雷が落ち、ドームに亀裂が生じた。
 亀裂が小さすぎたためか、あるいは、自動検知装置が故障していためか、
 ドームの二酸化炭素管理システムはこの亀裂の位置を特定できなかった。

 老人は二酸化炭素除去装置の出力を上げたが、亀裂から侵入してくる二酸化炭素の
 濃度の方が高かった。

 グリーンの息子に助けを求めることも出来たが、老人は十分に人生を生きたと思っていた。
 妻との暮らしも楽しく、満足できる人生だった。
 そんな人生を妻と二人で終わることができるのなら、幸せだと思った。
 妻に話すと、彼女も、もう十分ですと満足げにうなずいた。

 そして、老夫婦は静かに息を引き取った。

 人類、絶滅の瞬間だった。

 ただ、人類の文化や遺産、歴史はグリーンピープルに引き継がれたのが、
 せめてもの救いだったかもしれない。



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Last updated  February 12, 2007 11:06:09 PM
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