〈新作「ヌル庵」はレンズと変形ミラーとスピーカーによって構築された茶室です.計算機自然の中,質量にインプリントされた倫理や規範(落合のいう質量への憧憬や民藝)を道具を通じて体得する機会としての茶室のあり方を考えます.本展覧会の標題「騒即是寂∽寂即是騒」は,計算機自然における根源的真理を象徴します.静寂が騒がしさの中から生まれ,また静寂によって騒がしさも生まれるという図と地の関係を音と光の中に再考し,見るものと見られるものの間に新しい自然を構築することを考えることで一連の展示作品群は選定されています〉
〈ここに醸成されつつある物化する計算機自然は老荘思想や日本的霊性,民藝と接続し,アジアの文化的地層を発掘するとともに,対話を繰り返しながら多義的宇宙論を構成しつつある赤子である.規範が刻印されたオブジェクトと共に創発する喜びを共有し,無為自然の日々を喜びあって過ごす美学の醸成こそが平和の希求であるだろう.森羅万象に中心を持たず質量と非質量の分け隔てない新しい自然の伸長と文化の創成こそ,計算機自然の道である〉
落合陽一「ヌル庵:騒即是寂∽寂即是騒」