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テーマ:ニュース(99795)
カテゴリ:ジャーナリズム
NHKの会長人事が揺れている。NHK経営委員会は橋本元一現NHK会長の任期が来年1月で切れるのを見通して後任会長の選任作業に入っているが、古森委員長(富士フィルムホールディングス社長)の独断専横が過ぎるとして今日19日、、女性2委員が記者会見を開き、異例の異議申し立てを行った。 そもそもの話からすると、経営委員会は「国民のメディア」(これはしっかり確認、NHKは決して政府のメディアではない!)であるNHKの経営や業務実態が、権利者である視聴者国民の利益に沿って正しく行われているかを監督監査する視聴者代表の組織で、現場の最高責任者である会長の直接任免権を持つほか幹部人事にも大きな影響力を持つ機構だ。現在は、全国を8つに分けた地域代表と4人の全国代表の計12人で構成されている。 しかし、視聴者代表とは言うが、この経営委員会のうち古森会長以下少なくとも5人は財界代表と目される人たちだ。個々の思想傾向までつまびらかには知らないが、現在の委員構成も時々の国家権力がNHKを国民のメディアから政府の宣伝媒体に変えようと圧力をかけ続けた歴史の産物であり、現況は安倍政権が送り込んだ古森委員長らが支配勢力を形作っていて、その古森委員長が財界人を強引に次期会長に据えようと画策する中で、今回の異例の造反が起きたとみられる。 いってみれば安倍政権亡霊の暗躍とも言える現象であるわけだが、古森委員長らの策謀が成功すれば、いまでさえ権力批判に及び腰のNHKは最終的に国民の報道機関であることをやめ、政府財界権力のスピーカーに堕してしまいかねない。これは、日本における最も重要なジャーナリズムのひとつが、事実上死滅することを意味する。 こうした危機感を抱いた人々は少なからずあり、経営委員の造反とは別に、桂敬一氏らを代表とする「原さん、永井さんをNHK会長候補に推薦する会」が、川口幹夫元NHK会長を含む70人の放送関係者らの賛同署名を添え、原寿雄氏(元共同通信編集主幹)と永井多恵子現NHK副会長を次期会長に推薦する旨、経営委員会にこれも異例の申し入れを行っている。 余談だが、ここに登場する人々の名前はいずれも懐かしい。桂敬一氏の著書『現代の新聞』(岩波新書)は出版当時、地方紙の編集に携わっていたコジローには、新人記者に不屈のジャーナリスト魂を叩き込む絶好の教科書だった。その桂氏らが推薦するお二方のうち、永井さんは女性アナウンサーの草分け程度にしか存じ上げないが、原寿雄氏は『新聞記者の処世術』(晩声社)『新しいジャーナリストたちへ』(同前)ほか現役時代に何冊も読んだ著書を通じ、権力に決して媚びない気骨あるジャーナリストと尊敬していた人だ。 こうした方が本当にNHKのトップになれば、NHKはもちろんのこと、日本の報道全体が根底から変わるきっかけになるかも知れない。それは、日本という体制迎合的な政府プロパガンダ報道に情けないほど引きずられやすい日本社会の質的変化に直結してゆく可能性も秘めている。桂氏らの運動を我らが支援する方法はないものだろうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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