環境・平和・山・世相　コジローのあれこれ風信帖

　予想通りというか、世界の中長期の温暖化ガス削減の方向を決めるＣＯＰ１５準備のため、ドイツのボンで開かれている国連気候変動枠組条約の作業部会での討議が難航している。作業部会は６月１日から１２日までの２週間（実質はウイークデイの１０日）。今日から後半戦が始まるが、先進国と途上国の主張の隔たりは大きく、これまでのところ条約事務局が用意した各論併記のペーパーから一歩も踏み込めていないという。

　先進国は、中国やインドなど途上国であってもいまや温暖化ガスの巨大な排出源となっている国々に対し、一定の削減目標受け入れを求めている。これに対し、中国やインドは現在の温暖化は先進国に責任があるとして、２０２０年に先進国全体で１９９０年比４０％の温暖化ガス削減を、先進国側がまず約束すべきだと主張、経済成長の足かせになる削減目標を課せられることを強く警戒している。

　「共通だが差異ある責任」は気候変動枠組条約の基本思想だ。現在の地球温暖化の原因を作ったのは明らかに先進国だから、途上国と先進国が果たすべき責任の程度にはもちろん差があってしかるべきだ。だから、京都議定書はまず先進国にだけ削減義務を課した。だが、温暖化ガスに国籍が刻印されているわけではない。どこの国が出そうが温暖化ガスの過剰は確実に地球の気候をおかしくする。破局的な気候変動を回避するために、共通の責任はどの国であれ、担ってもらわなくてはならない。

　地球温暖化対策の必要性はもちろんどの国も理解している。だが、自国が貧乏くじを引くことは避けたい。その思惑がぶつかるところにこの交渉の悩ましさがある。結論から言えば、ここはやはり先進国が野心的な削減目標を示し、また途上国の温暖化対策を技術面資金面で強力に支援するイニシアティブを発揮することで、途上国を巻き込んでいく以外打開の道はないだろう。

　ＥＵはすでに２０２０年ターゲットの中期目標で９０年比２０％減の積極的な目標を掲げ、もし他の先進国も歩調を合わせるならこれを３０％に上方修正するとしている。また、明日９日に開くＥＵ２７ヵ国財務相理事会で、途上国の地球温暖化対策支援に先進国から毎年１０００億ユーロ（１３兆７０００億円）の資金支援を行う必要があるとの試算を討議し、これを調達する仕組みをの検討に入る。このＥＵ財務相理事会の動きはもちろん、開催中のボンの作業部会に積極的なメッセージを発信し、ＣＯＰ１５での合意に向けた布石とすることを明らかに意識したものだ。

　一方、日本政府も同じく作業部会が継続中の明後日１０日、麻生首相が中期目標を発表する予定だ。しかし、それはＥＵのメッセージとは逆に、作業部会を激励するどころか冷や水を浴びせるようなことにならないか。報道によれば、政府筋は２００５年比１４％減の目標を軸に調整をすすめているという。１４％減と言えば大きそうだが、９０年比では７％減つまり京都議定書の約束より１％多いだけだ。もし、これが日本の目標として示されれば、志の低さに加え基準年のごまかしという姑息さもあわせて、世界の失笑を買うことになるだろう。

　日本は世界の温暖化対策をめぐる議論では期待される存在でなくなって久しい。だから、今さら程度の低い目標を出したところで、世界は「ふん、やっぱりな」と受け取るだけのことだ。それで、先の文節では「失望」と書かずにあえて「失笑」と書いた。このままでは、日本はこれからの温暖化対策をめぐる交渉で場外に追いやられてしまうだろう。

　だがしかし、これは逆に言えば、ここで世界の予想を超える野心的な目標を示せば、その意外性が交渉の前進に大きな力となる可能性も秘めているということでもある。麻生首相は、外交が得意分野だそうだ。であれば、このあたりの国際交渉の機微は心得ておられるだろうと思うのだが…　そう考える世界のＮＧＯが共同で6月２日、日経新聞に一面買い切りの意見広告を出した。「麻生首相はヒーローになれるか、それとも？」として、ロボットを操縦する麻生首相の漫画が描かれている。もちろん漫画などサブカルチャーに詳しい麻生首相を意識した広告だ。

　たしかに、麻生首相はヒーローになるチャンスがある。ワールドカップ出場を決めた岡田ジャパンと足並みをそろえ、ここは「世界を驚かす覚悟がある」ことを示すときではないか。　

　キイシモツケ、背景は紀泉高原です。

　話は変わって、昨日は毎年恒例のクリーンハイクつまり清掃登山で、紀州富士の異名でも知られる龍門山に登ってきました。この清掃登山を機に登山者レベルではゴミの持ち帰りマナーはほぼ完全に定着し、ゴミ拾いといっても登山口に着くまでの国道や農道周辺に落ちているものが大半。登山道にはほとんどゴミは見あたらず、好天にも恵まれて爽やかなハイキングを楽しむことができました。ただ、龍門山と言えばこの花というべきキイシモツケ、今年はちょっと満開のタイミングに遅かったようでそれだけが残念でした。

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