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カテゴリ:楽園に吼える豹
藤堂とユイが店から出てくると、二人はそれぞれのGSと一緒に、分かれて車に乗り込んだ。
「カナメ・キリサキとの対談はどうでした?」 レオンは早速質問をぶつける。 “主人(マスター)”が出てくるまで店の外でそれとなく見張っていたが、ユイと藤堂が会いそうな人物といえば、先ほど見かけたカナメ・キリサキ―――待っている間に名前を思い出した―――くらいしかいない。 無論、相手が先に店の中で待っているという可能性もあったから、レオンの予想が的を射ているか否かは五分五分であったが。 「…何の話かしら」 とぼけてはみたが、うまく本心を隠せたかどうかは疑わしい。 レオンの青い目で見つめられると、全てを見透かされているような錯覚に陥って落ち着かない。 ユイは最近、レオンとうまく視線を合わせることができなくなっていた。 きっかけはあのサウスロイヤルホテルでの一件だったと思うが、それ以後起きた出来事によるところも大きい気がする。 先日の、ホテルのバーでの事件もその一つだった。 そのときユイは、マクレラン派の先輩に当たる男性官僚と飲んでいた。 最初はユイのほかにも数人のメンバーがいたのだが、ほろ酔いになったところで秘書に強引に帰らされてしまった。どうやら明日の朝も早いらしい。 そのときにユイも帰ればよかったのだが、残った男性に止められ、結局もう少し居残ることにした。 ユイは人付き合いが苦手なほうだが、彼は同じ派閥に属する者であり、日頃からユイは彼に何かと世話になっていた。 そしてこの酒の席は接待も兼ねた場であったから、あっさりと席を立つことは失礼に当たると思ったのだ。 だからユイは、彼と二人で飲んでいる状況になっても、致し方ないと最初は思っていた。 が、時間がたつにつれ、ユイは危機感を募らせ始める。 ユイはザルだからどれだけ飲んでも酔わないが、相手はかなり酔っ払っているようで、ユイに対する態度もだんだん馴れ馴れしくなっていた。 相手を不快にさせないよう、適度に保たれていた距離は徐々に詰められ、ユイは既に、彼が手を伸ばせばすぐに触れられてしまう状況に陥っていた。 しかも、二人が飲んでいる店は、席と席との間に仕切りがあり、ほとんど個室の状態になっている。 また、ユイたちが座っている席は店の一番奥にあり、入り口からはほとんど死角になっていて、中の様子が全く伺えない。 これはさすがにまずい、と思い、飲みかけのダイキリを置いて席を立った。 トイレで呼吸を整え、冷静になるよう努める。彼に対して失礼があってはいけない。 ユイは自分のきつい性格を自覚しているが、いくら何でも自分より先輩に当たる人間に対して無礼な言動を働くわけにはいかない。 なるべく穏やかな口調で、お開きにしよう。 そう決意して席に戻ると、酔って顔が赤くなっている先輩官僚が、ニコニコしながら手を振ってきた。 「遅いぞ。さ、飲もう」 まだ帰る気がないのか、と少々うんざりしながら、なるべく彼と距離をとって席に着く。 とりあえずここは逆らわずに飲酒を続けて、タイミングを見計らって帰ろうと思い、飲みかけだったカクテルを口に運ぼうとしたとき。 「ダメですよ、飲んじゃ」 つづく 人気ブログランキングに参加しました。 よろしければクリックお願いします♪(*^▽^*) ↓ 変なところで切ってすみません。 キリのいいところまでアップすると長くなりすぎてしまうのと、このあとのところでちょっと手直ししたい箇所があったので、続きはまた今度(^^ゞ ちなみにユイが飲んでいる「ダイキリ」はカクテルの名前です。 飲みやすくて、私も好きです♪(*^-^*) 一番好きなのは「グラスホッパー」かな? 機会があれば、これもお話に出したいですね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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