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カテゴリ:楽園に吼える豹
「“相応しくない”って? そう言ったのか」
こくりとユキヒロは頷く。 自分は藤堂のGSに相応しくない―――確かにアスカはそう叫んでいた。悲痛な声で。 「何言ってんだ今さら? 藤堂さんがGS嫌いなのは最初から分かってたことだろうに」 レオンは首をひねる。 アスカの言葉の真意はわからないが、おそらく六年前のことを思い出してナーバスになっているのかもしれないと、ユキヒロは予測していた。 彼女は他人に対して歯に衣着せぬ物言いをするし、腹を立てれば手も出すが、その実 どこか自分の力を恐れている節がある。 理性が残っているうちは手が出ても手加減するが、あの性格だから一度頭に血が上ると手がつけられなくなるのも確かだ。 本人もそれを分かっているから、今回の件に過剰反応するのだろう。 「まあ…お前でもダメなら、ここはいったん退くしかないな。 あいつが落ち着くのを待つしかない」 「………そう、ですね」 確かに、ここで押してもアスカは余計に頑なになるだけのような気がする。 しばらくそっとしておくのもいいかもしれない。 本来ならば橘やゴウシにも来てもらい、アスカの説得に加勢してもらいたいところだが、あいにく今日は二人ともそれどころではない。 橘は連続して発生したGSの不祥事の後始末にてんてこまいだし、ゴウシは謹慎を命じられたGSの代わりに官僚たちの警護に当たっている。 「……ところでよ、ユキ」 「はい」 「変だと思わねえか? この一連の事件」 「変…ですか?」 「変だよ。まぁ事実は小説より奇なりって言うからな、GSが立て続けに犯罪を起こしたって、別におかしくはないさ。 俺が言いたいのはそれじゃない。奴らが一様に“何も覚えてない”って言い張ってることだよ」 「それは…」 「“猛獣のDNAがそうさせた”って? お前までバカな評論家のバカな仮説を信じてるわけじゃないだろうな。 そんなわけねえだろ。動物のDNAが宿主の意識を乗っ取るなんてバカなことがあるわけねえ。 脳に直接DNAを植えつけたわけでもあるまいし」 レオンは全く世の言説を信じていないようだった。 「第一、そうだとしたら事件を起こしたGSのやり口はどうも人間くさい。 ブレットもキートンも、所持してた拳銃を使用してる。 相手を噛み殺したってんなら、まだわかるんだがな」 そちらのほうが、「凶暴な猛獣のDNAが目覚めたのだ」という世間の風評と、いかにも合致する。 「言われてみれば、そうですけど……ではレオンは、原因は何だと考えてるんです? まさか、彼らが揃って二重人格者だとでも?」 「ああ、そういう可能性もあるなぁ。だったら記憶がないのも頷ける。気付かなかったよ」 「茶化さないでください。あなたの考えはどうなんです?」 レオンの表情が、ふと真剣になる。 「別に考えなんて無いさ。ただ漠然とおかしいと思っただけだ。 …けど、俺も今後の身の振り方を考えないといけないかもな」 レオンは自分の携帯電話を見せた。テレビも見れるタイプだ。 画面は小さいが、はっきりとニュース番組が写っている。 「さっきまた殺された。今度は何と、国防長官だぜ。 うちの“主人(マスター)”と藤堂さんにも皺寄せが来ちまうな」 携帯の画面には、『GS、またも凶行』の字幕スーパーが踊っていた。 つづく 人気ブログランキングに参加しました。 よろしければクリックお願いします♪(*´∇`*) ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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