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カテゴリ:小説 桃色頭巾参上!
幕末 桃色頭巾参上! 7 ![]() 第七話 桃色頭巾誕生 家慶の 血筋流れる 桃の助 悪の始末に 女を捨てて 「では、そのお役目には桃の助という者を仕えさえよう。 日本橋の伊賀屋という茶問屋で隠れ商いをさせておる。伊賀の草じゃ、」 「わかり申した、して、岩窟武太郎殿は動かぬのか?」 「拙者は見ての通り、酒の悪毒のせいで、中風で足腰が痛み城にも上がることができぬ身体じゃ、 徳川の安泰を願う心持だけは誰にも負けぬがな。 桃の助にはわしがしっかり武芸百般仕込んである。某以上の働きをすること請け合いじゃ、 ご心配無用に願いたい。 それにじゃ、内聞に願うが、桃の助は徳川家慶様の種から産まれたご落胤なのじゃ、 この証拠の品をご御覧あれ、 大奥で家慶様からご寵愛を受けたくノ一の楓が懐妊し、 江戸城から去るときに楓にお渡しになった家慶様のお血筋の証となるのがこの品なのだ。 家慶様の愛刀であった、葵の紋の入った名匠志津三郎兼氏の短刀だ。 物騒なのでいざという時まで、わしが預かっておったのだ。 それにこの桃色頭巾は、産まれた子を包んでおった時の絹の産着で縫ったものだ。 江戸の悪を桃色頭巾を被って懲らしめてもらいたいと桃の助に伝えてもらいたい。 桃色頭巾は伊賀の者が密かに庇護することもお約束しよう。 「それは心強い、御意、桃の助殿にお渡しいたそう、」 「よしっ、本多康十郎、乾杯じゃ、、」 「ところで、武太郎殿、少々お酒を控えた方がよくはなかろうか、」 「べらぼうめ!酒を辞めるくらいなら、死んだ方がましでぃ、!」 岩窟武太郎は茶碗の酒を一気に飲み干した。 促されて、本多康十郎も飲み干した、うまい酒であった。 北町奉行隠密同心の本多康十郎が伊賀組同心の岩窟武太郎との 密談を終える頃には暮れ六つも過ぎ、夕暮れがせまって、 空には灰色の雲が覆いかぶさっておいた。 屋敷の敷地の大きな山桃の木の枝で、フクロウがほっーほっーと鳴いた。 本多康十郎は足を進めてほっと息をついた。 四谷伊賀屋敷の辺りでは不気味な殺気が感じられるのである。 岩窟武太郎を除けば、伊賀忍者がいるわけでもないのだが、 それとも、まだ伊賀忍者は潜んでいるのだろうか? 怨念のような不気味な空気が漂っているかのように感じられるのだった。 つづく 朽木一空
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最終更新日
2023年05月16日 10時30分07秒
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