|
カテゴリ:小説 桃色頭巾参上!
幕末 桃太郎頭巾参上! 10 ![]() 第十話 隠密同心本多康十郎 徳川の 江戸を見張って 悪退治 隠密同心 風切る十手 北町奉行所、隠密同心の本多康十郎もまた、伊賀組同心の岩窟武太郎に 負けぬ徳川幕府に長い間仕える同心であった。 家康入府以来の三河の国から仕えてきた奉行所の同心である。 徳川将軍がが15代なら本多家の同心稼業も10代続いていた。 名奉行大岡越前にも遠山金四郎にも先祖は仕えてきた万年同心である。 生粋の江戸っ子の同心であり、徳川家康の康の一字を入れた 康十郎という名前を頂いている。 北町奉行所の 隠れ御用人、隠密同心としてと幕府に仕えていた。 直参旗本や御家人にも引けをとらぬ徳川贔屓(ひいき)だったのである。 康十郎の手下の岡っ引きの伝吉もまた親の代からの岡っ引きで 本多康十郎の住む八丁堀の同心屋敷の片隅に小屋を作って住まわせて もらっている。 同心の康十郎と岡っ引きの伝吉は身分が違えど、兄弟のような付き合いで、 二人三脚で江戸の町を見守っていた。 「伝吉、四谷の岩窟武太郎から心強い援軍を得たぞ。 伊賀実戦武道塾の免許皆伝の桃の助という男だ。 桃色頭巾と名乗って我らの力になってくれるそうじゃ。」 「へえ、桃色頭巾ですか、まさか一人じゃありませんよね、、」 「無論じゃ、伊賀者が三人いるそうじゃ、」 風狸(ふうり)という老忍は伊賀の狸穴の出処で、 狸なので八つの顔を持つ忍者だ。男(キキ)、女(スズメ)、武士、坊さん、乞食、町人商人、なんにでも化ける名人ということだ。 サヨリという女はくノ一だそうで、手裏剣の名手で、どんな男もたぶらかしてしまう魔風の女だということだ。 三人とも、伊賀実戦武道塾で鍛えられ、岩窟武太郎から免許皆伝を伝授されているそうだ、 戦えば、とても我々など及びもせぬぞ。 さしあたり、わしら、奉行所では手の出せぬ案件を片付けてもらうため、 悪の目録を書きつけて渡そうと思うておる。 ずるい悪、隠れた悪、奉行所で裁けぬ悪、大名家旗本家の裏でうごめく悪、 役人に儲けを分け、裏でつながっている悪、旗本奴が絡んでいる悪、奉行所から十手を預かり、御用を務めながらの悪、 それに、隠れ岡場所も見逃せねえ、 毒牙にかかって命を落とした女は数知れないのだ。 油買い占め、売り惜しみも何とかしねえとな、 行灯に灯が入らなくて、町は真っ暗だ。 それに、ほんだら経の壺売りもな、」 「ずいぶん書き連ねましたね、それにしても、悪の裏じゃ随分奉行所が絡んでますね、これじゃ、江戸はよくならねえ、、」 「身を斬られる思いだが、身を斬らねば江戸の掃除はできねえからな、」 北町奉行所、隠密同心の本多康十郎と岡っ引き伝吉は目録を書き上げると、 身内の奉行所を裏切っているかのような気持ちが湧き、 身震いにも似たぞくぞくっとしたものが背中を走るのを感じた。 屋敷の外の槇の枝に止まっていた 鵯(ひよどり)がさっと、 思い切ったように飛び立った姿に元気づけられていた。 つづく 朽木一空
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023年05月22日 10時30分07秒
コメント(0) | コメントを書く
[小説 桃色頭巾参上!] カテゴリの最新記事
|