|
カテゴリ:小説 将棋指し、座頭の飛吉
~将棋指し、座頭の飛吉7、 おまけの壱、 隠居の将棋 横町の隠居と、表通りの隠居が、二人で将棋を指しています。 どうやら横町の隠居方が二回続けて負けて、この三回目も負けそうです。 「待った、待った」 横町の隠居が、待ったをすると、 「いや、待てぬ。これで二回も待ったをしたのだ、もうだめだ」 と、表通りの隠居は、冷たく言います。 「もう一度だけだ、たのむ」 「いいや、だめだ」 「そこを何とか、たのむ」 「だめだったら、だめだ」 しまいには、 「なにをー!」 「なにぃー!」 と、言って、将棋盤(しょうぎばん)をひっくり返す始末、 「もうお前とは、一生将棋はささんぞ」 怒って、二人は別れてしまいました。 ところが二人とも、その日の夕方にもなりますと、なんとなくそわそわ。 「あの時、待ったをしてやりゃあよかった」 「あの時、素直に負けを認めていれば、今頃は酒をくみかわして・・・」 と、しきりに、喧嘩をした事が悔やまれてなりません。 そこで横町の隠居は何とか仲直りの方法はないものかと表通りまでやってきますと、 表通りの隠居も、そわそわそわそわと、門を出たり入ったりしております。 二人は、ばったりと目が合うと、つい、 「さっきのは、お前が悪いんだぞ!」 もう一方も、負けずに、 「いいや、お前が悪いんだ!」 「では、どっちが悪いか、将棋で決めよう」 「おお、将棋で決着をつけるぞ!」 と、言ってあがりこみ、さっそく将棋盤をかこんでさし始めました。 将棋好きの人は、だいたいがこんなものです。 江戸小噺より、、 笑左衛門
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023年10月05日 10時30分07秒
コメント(0) | コメントを書く
[小説 将棋指し、座頭の飛吉] カテゴリの最新記事
|