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カテゴリ:小説 将棋指し、座頭の飛吉
将棋指し、座頭の飛吉8、 おまけの弐、 ![]() ~将棋の殿様~ ある殿さま、ふとしたことから将棋に懲り、家来を相手に毎日熱中する。 それはいいが、自分が負けそうになると決まって、 ~お取り払い~ つまり、王手の駒を強制的に除かせたり、~お飛び越し~ 飛車が金銀を飛び越えて成ってしまったりと、やりたい放題。 家来が文句を言うと、 「主の命に背くか」 と居直るので始末に負えない。 これでは連戦連勝は当たり前で 「うーん、その方たちは弱いのう。鍛えてつかわさんため、 今日からは負けたる者は、この鉄扇で頭を打つからさよう心得よ」 始まれば、お取り払いにお飛び越しで、殿さまは負ける気遣いはないから、 家来の頭はたちまち瘤だらけ。 そこへ現れたのが御意見番の三太夫という、骨のある爺さん。 しばらく病気で出仕しなかったが、お飛び越しの一件を聞くと、 これは怪しからんと憤慨し、さっそく殿さまの前へ。 殿さま、三太夫に子供の頃から育てられているので、三太夫は大の苦手。 いやな爺が来た、と渋い顔をするが、三太夫はいっこうにかまわず 「将棋は畳の上の戦、軍学の修練にもなり、武士の嗜みとしては大いにけっこう。このじいも、年は取ってもまだまだお上のごときなまくらには負け申さん。 たちまち、お上のおつむりを瘤だらけにしてお目にかけるが、もしお上がお勝ち遊ばし、 それがしの白髪頭をお打ちになっても、戦場で鍛えし鋼のごとき頭、ご遠慮は無用」 と、挑発した。 それで殿さまも熱くなり、このくそ爺、ほえ面をかくなと、試合開始。 家臣一同、あのうるさいのが瘤だらけになるところを見たいと、 ワクワクして見守る中、みるみる殿さまの形勢悪くなり、案の定 「これ、その歩で桂馬を取ってはならん。主命じゃ。控えよ」 「これはけしからん。戦場においては、君臣の区別はござらん。桂馬は侍、歩は雑兵。それが一騎当千の侍を討ち取るときは、末頼もしき奴。 帰城の折りは取り立てつかわしたく存じますに、敵の大将がとやかく申したからとて、その言葉に従えましょうや」 理屈でくるから、どうにもならない。 お飛び越しを命じると 「飛車は軍師、その軍師が陣法に従わず、卑怯未練にも道なき所を飛び越して参るとは言語道断。首をはねて梟木に掛けますから、お引き渡しを」と、くる。 とどのつまり、殿さまは実力通り雪隠詰め。 剣の心得のある三太夫に鉄扇で頭を思い切り打たれて、殿さま、涙ポロポロ。 「うーん、一同の者、盤を焼き捨てい。明日より将棋を指す者は、切腹申しつける」 ~二代目禽語楼(きんごろう)小さん落語演目~より 講談の「大久保彦左衛門将棋の意見」を落語化したものと云われている。 笑左衛門
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最終更新日
2023年10月03日 10時30分07秒
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